銀行や信用組合、信用金庫に預けているお金について調べると、「名寄せ」という言葉が出てくることがあります。
特に、預金保険制度の説明でよく出てくる言葉です。
「普通預金と定期預金は別々に守られるの?」
「同じ銀行の別支店に分けたらどうなる?」
「夫婦で分けていたら、それぞれ1000万円まで?」
「子ども名義の口座はどう扱われる?」
「信用組合でも名寄せされるの?」
こうした疑問を持つ人は多いはずです。
結論からいうと、預金保険制度では、
同じ金融機関にある同じ預金者の預金は、名寄せによって合算されます。
つまり、同じ銀行のA支店とB支店に分けていても、同じ金融機関で同じ預金者なら合算されます。
普通預金と定期預金も、同じ金融機関であれば合算されます。
そして、決済用預金を除く一般預金等は、1金融機関ごとに預金者1人あたり元本1000万円までと破綻日までの利息等が保護されます。
預金保険機構も、名寄せの結果、決済用預金以外の保護対象預金の元本合計が1000万円を超える場合には、1000万円までと破綻日までの利息等が保護されると説明しています。(参考サイト:預金保険機構)
この記事では、預金の名寄せとは何か、同じ銀行の複数口座や家族名義の預金がどう扱われるのかを、できるだけわかりやすく解説します。
預金の名寄せとは?
同じ金融機関の同じ預金者の預金を合算すること
名寄せとは、同じ金融機関にある同じ預金者の預金をまとめて集計することです。
預金保険制度では、金融機関が破綻したときに、どこまで預金を保護するかを判断する必要があります。
そのとき、口座ごとにバラバラに見るのではなく、同じ金融機関にある同じ預金者の預金をまとめて確認します。
これが名寄せです。
たとえば、同じ銀行に普通預金、定期預金、別支店の口座がある場合、それらは原則として合算されます。
「口座を分けているから別々に1000万円まで守られる」というわけではありません。
預金保険制度の上限を判断するために行われる
名寄せは、預金保険制度の保護範囲を判断するために重要です。
預金保険制度では、当座預金や利息の付かない普通預金などの決済用預金は全額保護されます。
一方、定期預金や利息の付く普通預金などは、1金融機関ごとに預金者1人あたり元本1000万円までと利息等が保護されます。(参考サイト:金融庁「預金保険制度」)
そのため、同じ金融機関内で複数の口座を持っている場合、名寄せによって合計額を確認する必要があります。
1000万円を超えるかどうかは、1口座ずつではなく、同じ金融機関にある同じ預金者の合計で見ます。
同じ銀行の複数口座はどう扱われる?
同じ金融機関なら合算される
同じ銀行に複数の口座を持っている場合、それらは名寄せによって合算されます。
たとえば、次のようなケースです。
普通預金:400万円
定期預金:500万円
別支店の普通預金:300万円
この場合、同じ銀行で同じ預金者の口座であれば、合計1200万円として扱われます。
決済用預金ではない一般預金等の場合、保護されるのは元本1000万円までと破綻日までの利息等です。
残りの200万円部分は、金融機関が破綻した場合、その金融機関の財産状況に応じて払い戻されることになります。
別支店に分けても上限は増えない
よくある誤解が、「別支店に分ければ、それぞれ1000万円まで守られる」というものです。
これは違います。
同じ銀行の本店と支店に分けても、同じ金融機関であれば合算されます。
A銀行の本店に700万円。
A銀行の別支店に500万円。
この場合、合計は1200万円です。
同じ金融機関なので、一般預金等として保護されるのは元本1000万円までと利息等です。
預金を分散する場合は、支店を変えるだけではなく、金融機関そのものを分ける必要があります。
普通預金と定期預金は別々に守られる?
同じ金融機関なら普通預金と定期預金も合算
普通預金と定期預金は、それぞれ別々に1000万円まで守られるわけではありません。
同じ金融機関にある同じ預金者の一般預金等は、名寄せによって合算されます。
たとえば、同じ銀行に次の預金があるとします。
普通預金:800万円
定期預金:500万円
この場合、合計は1300万円です。
一般預金等として保護されるのは、元本1000万円までと破綻日までの利息等です。
1000万円を超える300万円部分は、破綻した金融機関の財産状況に応じて払い戻されます。
複数の定期預金に分けても同じ
定期預金を複数に分けていても、同じ金融機関であれば合算されます。
たとえば、同じ銀行で定期預金を300万円ずつ4本に分けていたとします。
合計は1200万円です。
この場合も、口数が4本あるからといって、それぞれ1000万円まで守られるわけではありません。
預金保険制度では、口座数や定期預金の本数ではなく、同じ金融機関にある同じ預金者の合計額で判断されます。
夫婦名義の預金はどうなる?
夫と妻は原則として別々の預金者
預金保険制度では、1金融機関ごとに預金者1人あたりで保護範囲を判断します。
そのため、夫名義の預金と妻名義の預金は、原則として別々の預金者として扱われます。
たとえば、同じ銀行に次の預金があるとします。
夫名義:1000万円
妻名義:1000万円
この場合、夫と妻は別の預金者なので、それぞれについて保護範囲が判断されます。
ただし、名義だけを分ければ何でもよいというわけではありません。
名義だけでなく実態も大切
家族名義の預金では、名義だけでなく実態も大切です。
たとえば、実際には夫のお金なのに、形式的に妻名義や子ども名義の口座に入れている場合、税務上の問題や実質的な所有者の問題が出ることがあります。
預金保険制度の話だけでなく、贈与や相続の問題にも関わることがあります。
「家族名義に分ければ全部安全」と単純に考えるのではなく、誰のお金なのか、誰が管理しているのか、贈与が成立しているのかも意識する必要があります。
不安な場合は、金融機関や税理士などの専門家に確認すると安心です。
子ども名義の口座はどう扱われる?
子ども名義なら別の預金者として扱われるのが基本
子ども名義の口座も、名義上は子ども本人の預金です。
そのため、預金保険制度では、子ども名義の預金は親名義とは別の預金者として扱われるのが基本です。
ただし、ここでも実態が問題になることがあります。
親が自分のお金を子ども名義に移しただけなのか。
子どもへの贈与として成立しているのか。
通帳や印鑑を誰が管理しているのか。
子ども本人がその預金を使える状態なのか。
こうした点によって、税務上や相続上の見方が変わることがあります。
名義預金には注意
子どもや家族の名義になっていても、実質的には別の人のお金と見られる預金を「名義預金」と呼ぶことがあります。
たとえば、親が子ども名義の口座を作り、親のお金を入れ、通帳も印鑑も親が管理しているような場合です。
このような預金は、相続や贈与の場面で問題になることがあります。
預金保険制度の名寄せとは少し別の話ですが、「家族名義に分ければ安心」と考えると別のリスクが出る場合があります。
名義を分けるときは、預金保険だけでなく、税務上の扱いも意識しておきましょう。
個人事業主や屋号口座はどうなる?
個人名義と事業用口座の関係に注意
個人事業主の場合、個人の生活用口座と、事業用の口座を分けていることがあります。
屋号付き口座を使っている人もいます。
ここで注意したいのは、屋号が付いていても、口座の名義が個人である場合です。
預金保険制度でどう名寄せされるかは、金融機関の登録情報や預金者の扱いによって確認が必要です。
たとえば、個人名義の普通預金と、屋号付きの事業用口座が同じ金融機関にある場合、同じ預金者として合算される可能性があります。
事業資金が大きい人は決済用預金も検討
個人事業主や小規模事業者は、仕入れ代、人件費、家賃、税金の支払いなどで、一時的に大きな資金を同じ金融機関に置くことがあります。
その場合、一般預金等として1000万円を超える部分は全額保護の対象ではありません。
事業資金を安全に置きたい場合は、決済用預金を検討する方法があります。
決済用預金は、無利息、要求払い、決済サービスを提供できるという条件を満たす預金で、預金保険制度では全額保護されます。預金保険機構も、決済用預金は全額保護されると説明しています。(参考サイト:預金保険機構)
法人口座は個人口座と合算される?
法人と個人は別の預金者
会社名義の法人口座と、代表者個人の口座は、通常は別の預金者として扱われます。
たとえば、A社名義の預金と、A社社長個人の預金は、名義も預金者も異なります。
そのため、預金保険制度の保護範囲も別々に判断されるのが基本です。
ただし、会社と個人のお金を混同していると、別の問題が出ることがあります。
会社のお金を個人口座で管理している。
個人のお金を法人口座に入れている。
こうした状態は、会計や税務の面で問題になりやすいため注意が必要です。
法人も1000万円までと利息等が基本
法人名義の一般預金等についても、基本的な考え方は同じです。
決済用預金を除く一般預金等は、1金融機関ごとに1預金者あたり元本1000万円までと利息等が保護されます。
法人であっても、同じ金融機関に複数口座があれば名寄せされます。
事業資金が大きい法人は、決済用預金や複数金融機関への分散を検討することがあります。
信用組合や信用金庫でも名寄せされる?
信用組合も信用金庫も考え方は同じ
預金保険制度は、銀行だけでなく、信用金庫や信用組合なども対象です。
金融庁も、預金保険制度では、定期預金や利息の付く普通預金などは元本1000万円までと利息等が保護され、決済用預金は全額保護されると説明しています。(参考サイト:金融庁「預金保険制度」)
そのため、信用組合や信用金庫でも、同じ金融機関にある同じ預金者の預金は名寄せされます。
同じ信用組合の本店と支店に分けていても、同じ金融機関であれば合算されます。
同じ信用金庫の複数支店に分けても同じです。
「銀行ではないから対象外」ではない
信用組合や信用金庫について、「銀行ではないから預金保険制度の対象外では」と不安に思う人もいます。
しかし、信用組合や信用金庫も預金保険制度の対象です。
大切なのは、金融機関の種類だけでなく、自分がどの金融機関に、どの種類の預金を、いくら預けているかです。
信用組合の預金保護について詳しく知りたい方は、こちらの記事で解説しています。
→ 信用組合の預金は大丈夫?銀行との違いと預金保険制度をわかりやすく解説
名寄せでよくある勘違い
支店を分ければ別々に守られると思っている
同じ金融機関の支店を分けても、名寄せでは合算されます。
A銀行の本店とA銀行の支店は、同じA銀行です。
そのため、同じ預金者であれば合算されます。
支店を分けることは、預金保険の上限を増やす方法にはなりません。
普通預金と定期預金で別枠だと思っている
普通預金と定期預金も、同じ金融機関にある一般預金等であれば合算されます。
普通預金で1000万円、定期預金で1000万円なら、合計2000万円です。
それぞれ1000万円ずつ全額保護されるわけではありません。
家族名義なら何でも安全だと思っている
夫婦や子ども名義に分ければ、預金者ごとに扱われるのが基本です。
ただし、名義だけを分けた預金は、税務上や相続上の問題が出ることがあります。
特に子ども名義や親族名義の口座は、誰のお金なのか、誰が管理しているのかを確認しておくことが大切です。
金融機関のニュースで不安になったときの確認手順
まず同じ金融機関ごとに合計する
全東信の破産をきっかけに、東和銀行や近畿産業信用組合など、金融機関名が報じられています。
こうしたニュースを見ると、不安になる人もいると思います。
そのときは、まず自分の預金を同じ金融機関ごとに合計してみましょう。
A銀行にいくら。
B信用金庫にいくら。
C信用組合にいくら。
このように分けて確認します。
そのうえで、それぞれの金融機関で一般預金等が1000万円を超えていないかを見ます。
対象商品かどうかを確認する
次に、預金保険の対象商品かどうかを確認します。
普通預金や定期預金などは、預金保険の対象です。
一方、外貨預金、譲渡性預金、投資信託などは対象外です。預金保険機構も、外貨預金や譲渡性預金などは預金保険による保護の対象外だと説明しています。(参考サイト:預金保険機構)
金融機関で購入した商品でも、預金保険制度で守られるとは限りません。
不安な場合は、金融機関の公式窓口で確認しましょう。
不安をあおる電話やメールに注意
名寄せや1000万円超えを口実にする連絡に注意
金融機関名がニュースに出ると、不安につけ込む電話やメール、SMSが出る可能性があります。
特に、「名寄せ」「1000万円超え」「預金保険」などの言葉を使って不安をあおる連絡には注意が必要です。
「名寄せの結果、あなたの預金は危険です」
「1000万円を超えているので今日中に移してください」
「預金保険の手続きに暗証番号が必要です」
「安全な口座に移すのでキャッシュカードを預かります」
「保護対象にするには手数料が必要です」
このような連絡には応じないでください。
金融機関や公的機関が、電話やメールで暗証番号、キャッシュカード、ワンタイムパスワードを求めたり、急いで資金移動を求めたりすることは通常ありません。
公式窓口で確認する
不安な連絡を受けた場合は、相手が名乗った電話番号に折り返すのではなく、金融機関の公式サイトや通帳、キャッシュカードに記載された正規の窓口に確認してください。
メールやSMSのリンクを押してログインするのも避けた方が安全です。
不安を感じたときほど、急がされる情報に乗らず、公式情報で確認することが大切です。
まとめ
預金の名寄せとは、同じ金融機関にある同じ預金者の預金を合算することです。
預金保険制度では、同じ銀行、信用金庫、信用組合にある普通預金や定期預金などの一般預金等は、名寄せによって合計されます。
そのうえで、1金融機関ごとに預金者1人あたり元本1000万円までと破綻日までの利息等が保護されます。
同じ銀行の別支店に分けても、同じ金融機関なら合算されます。
普通預金と定期預金も、同じ金融機関なら合算されます。
夫婦名義や子ども名義は、原則として別々の預金者として扱われますが、名義だけを分けた預金には税務上や相続上の注意点があります。
また、決済用預金は全額保護されます。
外貨預金や投資信託など、預金保険の対象外になる商品もあります。
金融機関のニュースで不安になったときは、まず同じ金融機関ごとに預金を合計し、1000万円を超えていないか、預金保険の対象商品かを確認しましょう。
名寄せを理解しておくと、「口座を分ければ大丈夫」「支店を分ければ別枠」といった誤解を避けやすくなります。
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