ニュースで突然出てくることがある、
「起債許可団体」
という言葉。
「何か危ない団体なの?」
「自治体がお金を借りられなくなるってこと?」
「財政破綻の一歩手前なの?」
と疑問に思った人も多いのではないでしょうか。
起債許可団体とは、簡単にいうと、
借金の返済負担が一定以上に重くなり、新しく地方債を発行するときに国などの許可が必要になった自治体
です。
ただし、
起債許可団体=財政破綻
ではありません。
この記事では難しい自治体財政の制度を、
「家庭が住宅ローンを借りる場合」
に例えながら、
- 起債とは何か
- 起債許可団体になると何が変わるのか
- 実質公債費比率18%とは何なのか
- 25%になると何が違うのか
- 早期健全化団体との違い
- 税金や行政サービスへの影響
まで順番にわかりやすく解説します。
※家庭のローンへの例えは、制度を理解しやすくするためのイメージです。自治体財政と一般家庭では仕組みが異なるため、数字をそのまま置き換えることはできません。
- まず結論|起債許可団体は「借金禁止」ではない
- そもそも「起債」と「地方債」とは?
- 起債許可団体になると何が変わる?
- 実質公債費比率18%とは何?
- 18%を家庭のローン返済率にそのまま置き換えていい?
- 起債許可団体はどれくらい危ない状態?
- 25%になると何が違う?
- 起債許可団体と早期健全化団体の違い
- 起債許可団体になると住民生活はどうなる?
- 家庭に例えると「何を我慢するか」が重要になる
- 兵庫県のニュースで「起債許可団体」が注目された
- 「起債許可団体=破綻寸前」とは限らない
- 起債許可団体のニュースを見たら何を確認すればいい?
- さらに確認したい2つのポイント
- 30秒でわかる|起債許可団体を家庭に例えると
- まとめ|起債許可団体は財政悪化を知らせる「黄色信号」
まず結論|起債許可団体は「借金禁止」ではない
最初に一番大切なところから整理しましょう。
起債許可団体になったからといって、
自治体が地方債を発行できなくなるわけではありません。
また、
自治体が財政破綻したという意味でもありません。
簡単にいえば、
「借金返済の負担が重くなってきたので、新しく借りる場合には返済計画などを確認します」
という段階です。
家庭に例えるなら、
住宅ローンなどをすでに抱えている家庭が、新しくローンを申し込んだときに、
「現在の返済負担が大きいので、今後の家計も詳しく確認します」
と言われるような状態です。
「借金できない」のではなく、
借金に対するチェックが厳しくなる
と考えると分かりやすいでしょう。
そもそも「起債」と「地方債」とは?
起債許可団体を理解するには、まず「起債」という言葉を知っておく必要があります。
起債とは自治体がお金を借りること
「起債」とは、簡単にいえば、
国や自治体などが債券を発行して資金を調達すること
です。
地方自治体の場合、その借金にあたるものを、
地方債
と呼びます。
自治体は税金などの収入だけで、すべての事業をその年に支払っているわけではありません。
たとえば、
- 学校の建設
- 道路整備
- 防災施設
- 公共施設
- 大規模なインフラ整備
などでは、大きなお金が必要になります。
そこで地方債を発行し、長い期間をかけて返済することがあります。
地方債そのものが悪いわけではない
「自治体が借金している」
と聞くと、それだけで危ないように感じるかもしれません。
しかし、地方債そのものが問題なのではありません。
たとえば学校を建てれば、現在の住民だけでなく将来の住民もその学校を利用します。
建設した年の住民だけですべての費用を負担するのではなく、長期間かけて返済することで、
将来利用する世代にも負担してもらう
という考え方があります。
家庭でいえば、家を現金一括で買わず、住宅ローンを利用するのと少し似ています。
問題になるのは、
借りたことではなく、返済負担が重くなりすぎていないか
です。
起債許可団体になると何が変わる?
では、通常の自治体と起債許可団体では何が違うのでしょうか。
通常は「協議」が基本になる
地方債には、国との協議や許可に関する制度があります。
一定の財政状態にある自治体については、通常の協議制度の中で地方債を発行していきます。
しかし、借金返済負担などが一定の基準を超えると、
「協議」だけではなく「許可」が必要になる
場合があります。
その代表的な基準のひとつが、
実質公債費比率18%
です。地方財政法では、実質公債費比率など一定の条件に該当する自治体について、地方債発行に許可が必要となる仕組みが定められています。
家庭なら「ローン審査が一段厳しくなる」
家庭に置き換えてみます。
ある家庭には、
- 住宅ローン
- 車のローン
- 教育ローン
があります。
返済は続けていますが、収入に対する返済負担がだんだん重くなってきました。
そこへさらに、
「新しく500万円借りたい」
と申し込んだとします。
すると金融機関側は、
「今の借金はいくらありますか?」
「毎年いくら返していますか?」
「今後返済負担を減らす計画はありますか?」
と、これまで以上に慎重に確認するでしょう。
起債許可団体も、
「今まで借金していたからアウト」
ではなく、
「これ以上借りるなら、財政状態をしっかり確認します」
というイメージに近いです。
実質公債費比率18%とは何?
起債許可団体を調べると必ず出てくるのが、
「実質公債費比率」
という言葉です。
借金返済の重さを見る財政指標
実質公債費比率とは、簡単にいえば、
自治体の標準的な収入規模に対して、地方債の元金や利息などの実質的な返済負担がどれくらいあるのか
を見る指標です。
自治体本体の地方債返済だけでなく、一定の公営企業などに関係する負担も含めて計算されます。
そのため、
自治体が実際に抱えている借金返済負担を幅広く見るための数字
と考えると分かりやすいでしょう。
法令上の計算では、前3年度の数値を用いた平均が使われます。
18%を超えると許可制度へ
実質公債費比率が一定水準以上になると、地方債発行について許可が必要になります。
その重要な境目が、
18%
です。
つまり、
18%未満
→通常の協議制度
18%以上
→地方債発行に許可が必要になる
という大きな違いがあります。
ただし、
18%になった瞬間に財政破綻する
という意味ではありません。
18%を家庭のローン返済率にそのまま置き換えていい?
ここは非常に誤解しやすいポイントです。
「収入の18%を返済している」という意味ではない
実質公債費比率18%と聞くと、
「年収500万円なら90万円を借金返済しているという意味?」
と思うかもしれません。
しかし、これは正確ではありません。
実質公債費比率には、
- 標準財政規模
- 元利償還金
- 準元利償還金
- 特定財源
- 算入公債費等
など、自治体財政特有の数字が使われています。
そのため、
家計の年収に単純に18%を掛けることはできません。
家庭への例えは「負担感」を理解するため
家庭のローンに例える目的は、
18%という数字をそのまま家計へ変換することではありません。
あくまで、
「ローン返済負担が大きくなったため、新しい借金へのチェックが厳しくなった」
という関係を理解するための例えです。
ここを分けて考えると、制度を誤解しにくくなります。
起債許可団体はどれくらい危ない状態?
ここで一番気になるのが、
「結局どれくらい危ないの?」
ということでしょう。
信号機なら「黄色信号」に近い
分かりやすく信号機に例えてみます。
18%未満
通常の協議制度
↓
イメージとしては青信号
18%以上
起債について許可が必要
↓
イメージとしては黄色信号
つまり起債許可団体は、
完全に財政が行き詰まった状態ではないものの、借金返済負担について注意が必要になった段階
と考えると分かりやすいでしょう。
「何も問題ない」とも言えない
一方で、
「破綻ではないなら問題ない」
と考えるのも違います。
地方債発行について通常より厳しい管理が必要になるということは、
財政運営に改善が必要なサインが出ている
ということです。
家庭でいえば、
まだ住宅ローンを払えています。
生活もできています。
しかし金融機関から、
「これ以上借金を増やすなら返済計画を確認しましょう」
と言われている状態です。
放置してよい状態とはいえません。
25%になると何が違う?
起債許可団体を調べていると、
25%
という数字も出てきます。
これは18%とは意味が異なります。
25%は早期健全化基準に関係する
地方公共団体の財政の健全化に関する法律では、
- 実質赤字比率
- 連結実質赤字比率
- 実質公債費比率
- 将来負担比率
という「健全化判断比率」が設けられています。
実質公債費比率については、
25%
が早期健全化基準です。
この基準以上になると、単に地方債の許可の問題だけでなく、
財政健全化計画を策定して財政改善を進める段階
に入ります。
18%と25%は同じ意味ではない
整理すると、
18%
→地方債発行について許可が必要になるライン
25%
→早期健全化基準に達するライン
です。
同じ実質公債費比率を使いますが、
制度上の意味は別
です。
ここはニュースを読むときに非常に重要です。
起債許可団体と早期健全化団体の違い
この2つは名前が難しく、混同されやすい制度です。
起債許可団体は「新しい借金を管理する段階」
起債許可団体では、
地方債を新しく発行するときの管理が厳しくなる
ことが中心です。
家庭なら、
「新しいローンを組む際には、返済計画を詳しく審査します」
という段階です。
借金そのものが全面禁止されるわけではありません。
早期健全化団体は「財政全体を立て直す段階」
早期健全化団体になると、
財政健全化計画を策定し、議会の議決などを経ながら財政の立て直しを進める
必要があります。
家庭に例えるなら、
単に新しいローンを審査される段階から、
「今後の家計全体をどう改善するのか計画を作りましょう」
という段階へ進んだイメージです。
したがって、
起債許可団体=早期健全化団体
ではありません。
起債許可団体になると住民生活はどうなる?
制度の説明だけでは、
「自分たちに何の関係があるの?」
と思いますよね。
実際には、住民生活と無関係ではありません。
起債許可団体になっただけで増税されるわけではない
まず、
起債許可団体になったから自動的に住民税が上がる
という制度ではありません。
地方債発行に許可が必要になる制度と、税率を変更する制度は別です。
したがって、
「起債許可団体になった=増税決定」
という理解は間違いです。
ただし財政状況が厳しい自治体では、将来的に財源確保策や歳出見直しなどが検討される可能性はあります。
行政サービスも翌日から止まるわけではない
起債許可団体になったことで、
- ゴミ収集が止まる
- 学校が閉まる
- 道路整備が全部なくなる
- 福祉サービスが突然終了する
といったことが直ちに起きるわけではありません。
むしろ住民が注意して見るべきなのは、
財政改善策の中で、どの事業を残し、どの事業を見直すのか
です。
家庭に例えると「何を我慢するか」が重要になる
財政が厳しくなった家庭を考えてみましょう。
生活そのものは続けられる
住宅ローンの返済負担が重くなったからといって、
翌日から食事をしなくなるわけではありません。
電気や水道も使います。
子どもの学校にもお金が必要です。
つまり、
必要な支出は続きます。
自治体も同じで、行政には継続しなければならないサービスがあります。
新しい大きな支出は慎重になる
一方で、
「車を買い替えるのは来年にしよう」
「大規模なリフォームは延期しよう」
「使っていないサービスを見直そう」
といった判断は出てくるでしょう。
自治体でも、
- 新しい公共施設
- 大型公共事業
- 補助金
- 新規事業
- 既存事業
などについて、
本当に今必要なのか
を以前より厳しく判断する可能性があります。
住民への影響が出るとすれば、この部分です。
兵庫県のニュースで「起債許可団体」が注目された
2026年8月には、兵庫県が起債許可団体に移行したことで、この言葉が注目されました。
兵庫県は実質公債費比率19.2%
兵庫県では2025年度決算で、実質公債費比率が3年間平均で19.2%となり、18%の基準を超えました。
そのため、
地方債を発行するときに国の許可が必要な起債許可団体
へ移行しています。
兵庫県について、
「なぜ財政がここまで厳しくなったの?」
「本当に破綻するの?」
「県民生活には何が起きる?」
という点はこちらで詳しく解説しています。
→ 兵庫県は財政破綻する?起債許可団体とは何かを家計に例えてわかりやすく解説
兵庫県だけの制度ではない
重要なのは、
起債許可団体は兵庫県だけに作られた制度ではない
ということです。
自治体財政に関する全国共通の仕組みなので、将来ほかの都道府県や市町村についても、
「起債許可団体」
という言葉がニュースに出てくる可能性があります。
そのため、18%・25%という基準の意味を知っておくと、ほかの自治体の財政ニュースも理解しやすくなります。
「起債許可団体=破綻寸前」とは限らない
ニュースでは強い言葉ほど目立ちます。
しかし、
「起債許可団体になったから破綻寸前」
と単純に判断するのは注意が必要です。
破綻した後ではなく悪化を防ぐ仕組みでもある
地方債に許可を必要とするのは、
これ以上財政負担が重くならないよう管理する
という意味があります。
家庭でいうなら、
すでに自己破産した人に、
「これ以上借りないようにしましょう」
と言っているわけではありません。
まだ返済を続けている段階で、
「これ以上借りる場合は慎重に確認しましょう」
とブレーキをかけています。
本当に見るべきなのは数字の推移
起債許可団体になったかどうかだけでなく、
その後、実質公債費比率がどう動くのか
を見ることも重要です。
たとえば、
19%
↓
18%
↓
17%
と改善していく自治体と、
19%
↓
21%
↓
23%
と悪化していく自治体では、同じ「起債許可団体」でも状況は違います。
そのためニュースを見るときは、
単年度の名前だけでなく、数年間の推移
を確認すると状況が分かりやすくなります。
起債許可団体のニュースを見たら何を確認すればいい?
今後ほかの自治体でも同じニュースが出たときは、次のポイントを見ると理解しやすくなります。
実質公債費比率が何%なのか
まず、
18%を少し超えたところなのか
それとも、
25%に近づいているのか
を確認します。
同じ起債許可団体でも意味合いが違ってきます。
なぜ借金返済負担が増えたのか
次に原因を見ます。
たとえば、
- 災害復旧
- 大規模公共事業
- 公共施設整備
- 過去の地方債返済
- 公営企業への負担
- 金利上昇
など、理由は自治体によって違います。
一時的な要因なのか、長期的な構造問題なのかも重要です。
さらに確認したい2つのポイント
原因だけでなく、その自治体が今後どうするのかも確認する必要があります。
財政改善策が具体的に示されているか
「財政健全化に取り組みます」
だけでは内容が分かりません。
見るべきなのは、
- 公共投資をどれくらい減らすのか
- 地方債残高をどう管理するのか
- 新規事業をどう判断するのか
- 何年間で比率を改善するのか
といった具体策です。
住民生活に関係する見直しがあるか
そして住民にとって最も重要なのは、
予算のどこが変わるのか
です。
起債許可団体という名前自体より、
「道路整備を減らす」
「公共施設整備を延期する」
「補助事業を見直す」
など、実際の予算変更の方が生活への影響は大きくなります。
30秒でわかる|起債許可団体を家庭に例えると
最後に、一気に整理します。
自治体という家庭がある
↓
道路や学校を造るため地方債というローンを利用する
↓
昔のローン返済が積み重なる
↓
返済負担を見る実質公債費比率が上昇する
↓
18%以上になる
↓
新しい地方債を発行するときに許可が必要になる
↓
これが起債許可団体
です。
つまり、
「借金禁止になった自治体」ではありません。
家庭でいえば、
「ローン返済負担が重くなったので、新しく借りるなら返済計画を詳しく確認される状態」
です。
まとめ|起債許可団体は財政悪化を知らせる「黄色信号」
起債許可団体とは、実質公債費比率などが一定基準に達し、
地方債を発行するときに許可が必要になった自治体
です。
重要なポイントをまとめると、
起債許可団体=財政破綻ではない
地方債が全面的に禁止されるわけでもない
実質公債費比率18%が重要な境目
25%になると早期健全化基準に関係する
ということです。
家庭に例えるなら、
「ローン返済は続けられているが、負担が重くなったため、新しいローンには厳しいチェックが入るようになった」
状態です。
信号機に例えるなら、
赤信号で完全に止まった状態ではなく、財政の黄色信号
と考えると分かりやすいでしょう。
そしてニュースを見る際に本当に重要なのは、
「起債許可団体になった」
という名前だけではありません。
その自治体の実質公債費比率が、
今後改善していくのか、それともさらに悪化していくのか。
さらに、
財政を立て直すために何を見直すのか。
そこまで確認することで、自治体の財政状況がより正確に見えてきます。
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参考資料
- e-Gov法令検索「地方財政法」
- e-Gov法令検索「地方債に関する省令」
- e-Gov法令検索「地方公共団体の財政の健全化に関する法律」
- e-Gov法令検索「地方公共団体の財政の健全化に関する法律施行規則」

