本記事のリンクは広告を含みます

遺体がなくても殺人事件として立件できる?「遺体なき殺人」と証拠の考え方を解説

スポンサーリンク
🧩 捜査・制度のしくみ

殺人事件というと、

「まず遺体が見つかり、そこから捜査が始まる」

というイメージがあります。

では、

「行方不明のままで遺体が見つからない」

「遺体を探しても発見できない」

という場合はどうなるのでしょうか。

遺体がなければ、

「本当に死亡したのかも証明できないのでは?」

「殺人罪では起訴できないのでは?」

と思いますよね。

しかし実際には、遺体が発見されていなくても、殺人事件として起訴・有罪となった事例があります。

こうした事件は一般に、

「遺体なき殺人」

と呼ばれることがあります。

ただし、遺体がない事件では当然、

  • 本当に死亡しているのか
  • 事故や自発的な失踪ではないのか
  • 誰が死亡させたのか
  • どのように死亡したのか

などを、遺体以外の証拠から慎重に立証する必要があります。

この記事では、遺体がなくても殺人事件として立件できる理由と、どのような証拠が使われるのかを解説します。

スポンサーリンク
楽天「ユーザーに合わせた商品を表示」機能
  1. 「遺体なき殺人」とは?
    1. 殺人罪そのものは通常の殺人罪
    2. 実際に最高裁まで争われた事件もある
  2. 遺体がない事件で最初に問題になること
    1. 単なる行方不明の可能性もある
    2. 死亡を示す証拠が必要になる
  3. 遺体がない場合は何が証拠になる?
    1. 大量の血痕
    2. 防犯カメラ
    3. スマートフォン
  4. 被害者の生活が完全に途切れていることも重要
    1. 銀行口座が使われていない
    2. スマホやSNSが使われていない
    3. 家族や知人へ連絡していない
  5. 容疑者の行動も証拠になる?
    1. 不自然な買い物
    2. 不自然な移動
    3. 清掃や処分の痕跡
  6. 自白があれば遺体がなくても立件できる?
    1. 自白を客観的証拠で裏付ける
  7. 「犯人しか知らない情報」は重要?
    1. 報道されていない内容かを確認する
    2. 本当に本人しか知り得なかったかも重要
  8. 遺体がないと死因はどうやって証明する?
    1. 現場の証拠から推定する
    2. 供述と証拠を組み合わせる
    3. 必ず医学的な死因が判明するとは限らない
  9. 遺体が一部だけ見つかった場合は?
  10. 遺体を処分した証拠だけで殺人になる?
  11. 遺体なき殺人は立証が難しい?
    1. 一つの強い証拠ではなく証拠の積み重ねになる
    2. それぞれの証拠が同じ結論を指しているかを見る
  12. 「遺体がない=完全犯罪」ではない
  13. 遺体が見つかれば捜査はどう変わる?
    1. DNAで身元を確認できる
    2. 損傷を確認できる
    3. 死亡時期を考える材料になる
  14. 立件と有罪は同じではない
    1. 捜査
    2. 逮捕
    3. 起訴
    4. 有罪
  15. まとめ
  16. 関連記事
  17. 参考

「遺体なき殺人」とは?

「遺体なき殺人」は法律上の正式な犯罪名ではありません。

一般に、

殺人事件と考えられているものの、被害者の遺体が発見されていない事件

を表す言葉として使われます。

殺人罪そのものは通常の殺人罪

遺体がある事件と、遺体がない事件で殺人罪の条文が変わるわけではありません。

問題になるのは、

遺体という非常に重要な証拠がない中で、殺人をどこまで立証できるか

です。

実際に最高裁まで争われた事件もある

裁判所の公表資料にも「遺体なき殺人事件」と明記された事件があります。

2023年には、遺体のない殺人事件を含む事件について最高裁で死刑判決が維持された事例もあります。

つまり、

遺体がない=殺人罪では有罪にできない

という決まりはありません。

PR

遺体がない事件で最初に問題になること

遺体が発見されていない場合、まず大きな問題になります。

それは、

被害者が本当に死亡しているのか

という点です。

単なる行方不明の可能性もある

人が突然いなくなったとしても、

  • 自分の意思で失踪した
  • 海外へ行った
  • 家族との連絡を断った

などの可能性があります。

そのため、

「何年間も見つからない=殺された」

と単純には判断できません。

死亡を示す証拠が必要になる

殺人罪を立証するなら、

「この人物は死亡している」

という事実についても証拠が必要になります。

そのため、行方不明になる直前・直後の状況が詳しく調べられます。

行方不明届についてはこちらで解説しています。

行方不明届を出すと警察はどこまで調べる?捜索されるケースと仕組みを解説

遺体がない場合は何が証拠になる?

遺体がない事件では、一つの証拠だけではなく、多くの証拠を組み合わせて事件全体を見ます。

大量の血痕

非常に重要になることがあるのが血痕です。

法務省が公開している事例には、被害者の遺体は発見されなかったものの、

被告人の供述どおりの場所から被害者の大量の血痕が確認され、殺人罪などで起訴された事件

が紹介されています。

大量出血の状況などから、

「通常の生活を続けられる状態ではない」

と推認されることがあります。

防犯カメラ

被害者が最後に誰と一緒にいたのか。

どこへ移動したのか。

その後姿が確認されているのか。

防犯カメラは、被害者の最後の行動を確認する重要な資料になります。

スマートフォン

スマホには、

  • 通信記録
  • メッセージ
  • 検索履歴
  • 位置に関する情報
  • 写真

などが残ることがあります。

「この時間まではスマホを使っていた」

「この場所にいた可能性がある」

といった行動確認に利用される場合があります。

警察はどうやって行動履歴を特定する?スマホやデータ分析の仕組みを解説

でも詳しく解説しています。

被害者の生活が完全に途切れていることも重要

人が本当に死亡しているのかを考える場合、

その後の生活の痕跡

も確認されます。

銀行口座が使われていない

長期間、

  • 預金の引き出し
  • クレジットカード
  • 電子決済

などがまったく使われていない場合があります。

スマホやSNSが使われていない

普段頻繁に使っていたスマホやSNSが、ある日突然完全に止まっている場合も手掛かりになります。

家族や知人へ連絡していない

それまで家族や友人と日常的に連絡していた人が、突然すべての人間関係を断った状態になることもあります。

もちろん、それだけで死亡とは断定できません。

しかし、

複数の生活痕跡が同時に途切れている

ことは重要な状況証拠になります。

容疑者の行動も証拠になる?

被害者だけでなく、事件の前後での容疑者側の行動も調べられます。

不自然な買い物

事件の前後に、

  • 大型の袋
  • 運搬用品
  • 清掃用品

などを購入していたことが確認される場合があります。

ただし、買っただけで犯罪の証明になるわけではありません。

他の証拠と組み合わせて意味を持ちます。

不自然な移動

事件直後に、

  • 普段行かない場所へ行った
  • 深夜に長距離移動した

などの行動があれば、目的が確認されることがあります。

清掃や処分の痕跡

室内を異常に清掃していたり、物を処分していたりする場合も、他の証拠と合わせて調べられることがあります。

重要なのは、

一つ一つの行動だけではなく、全体として説明できるか

です。

自白があれば遺体がなくても立件できる?

自白は重要な証拠ですが、

自白だけで有罪にすることはできません。

日本国憲法と刑事訴訟法には、自白だけを唯一の証拠として有罪にしてはいけないという原則があります。

自白を客観的証拠で裏付ける

たとえば、

「店内で被害者を殺害した」

という自白があり、

実際にその場所から被害者の大量の血痕が見つかったとします。

すると、

供述内容と客観的な証拠が一致する

ことになります。

法務省が公表している事例でも、このような裏付けによって、遺体が発見されていない殺人事件が起訴されています。

自白と裏付け捜査についてはこちらで詳しく解説しています。

自供だけで有罪になる?裏付け捜査とは何をするのかをわかりやすく解説

「犯人しか知らない情報」は重要?

自白の信用性を考えるとき、

一般には知られていない具体的な情報

が問題になることがあります。

たとえば、

  • 犯行場所
  • 使用した物
  • 被害者の状態
  • 遺棄方法

などです。

報道されていない内容かを確認する

誰でもニュースで知っている情報なら、

「知っていたから犯人」

とはいえません。

一方、捜査機関しか把握していない事実と供述が一致している場合は、供述の信用性を考える材料になります。

本当に本人しか知り得なかったかも重要

ただし、その情報を、

  • 関係者から聞いた
  • 取調べで知った
  • 別の方法で知った

可能性がないかも検討する必要があります。

そのため、自白は常に客観的な証拠と合わせて評価されます。

遺体がないと死因はどうやって証明する?

ここが非常に難しい部分です。

遺体があれば、

  • 解剖
  • 外傷
  • 毒物検査

などから死因を調べることができます。

しかし遺体がなければ、それができません。

現場の証拠から推定する

たとえば大量の血痕や、事件現場の状況などから、死亡につながる行為があったと判断される場合があります。

供述と証拠を組み合わせる

「どのように死亡させたか」という供述があり、その内容と現場の証拠が一致するか確認します。

必ず医学的な死因が判明するとは限らない

遺体のない殺人事件では、

医学的に死因を完全に確定できない場合でも、他の証拠全体から殺人が立証される可能性があります。

つまり、

「死因が解剖で確定していなければ絶対に殺人罪にならない」

わけではありません。

遺体が一部だけ見つかった場合は?

「遺体がない事件」と、

遺体の一部だけ見つかっている事件

も少し違います。

骨や歯などが発見されれば、DNA型鑑定によって身元確認できる可能性があります。

遺体の一部しか見つからなくても身元はわかる?DNA鑑定と個人識別の仕組みを解説

で詳しく解説しています。

一部でも遺体が見つかれば、

  • 本当に死亡していること
  • 身元
  • 一部の損傷

などについて、新しい証拠が得られる可能性があります。

遺体を処分した証拠だけで殺人になる?

これも注意が必要です。

たとえば、

「遺体を運んだ」

「遺体を隠した」

という証拠があったとしても、

それだけで、

その人物が死亡させた

と決まるわけではありません。

死体遺棄・損壊と殺人は別の犯罪です。

死体遺棄を認めてもなぜすぐ殺人罪にならない?殺人と死体損壊・遺棄の違いを解説

で詳しく解説しています。

殺人罪として立件するためには、

死亡させた行為についても証拠が必要

です。

遺体なき殺人は立証が難しい?

一般に、遺体が存在しない事件では立証が難しくなることがあります。

遺体は、

  • 身元
  • 死亡
  • 死因
  • 損傷
  • DNA

など、非常に多くの情報を持つ重要な証拠だからです。

一つの強い証拠ではなく証拠の積み重ねになる

遺体がない場合には、

  • 血痕
  • 防犯カメラ
  • スマホ
  • 金融記録
  • 証人
  • 自白
  • 容疑者の行動

など、多数の証拠を組み合わせて事実を立証することになります。

それぞれの証拠が同じ結論を指しているかを見る

たとえば、

防犯カメラでは被害者が容疑者宅に入った。

その後、被害者が出てくる映像がない。

室内から大量の被害者の血痕が出た。

被害者のスマホ利用もその時点で止まった。

さらに容疑者が殺害を自白した。

というように、

別々の証拠が一つのストーリーとして一致しているか

が重要になります。

「遺体がない=完全犯罪」ではない

映画やドラマでは、

「死体さえ見つからなければ犯罪を証明できない」

という描写を見ることがあります。

しかし現実にはそう単純ではありません。

現在は、

  • DNA鑑定
  • 防犯カメラ
  • スマホ
  • 車両記録
  • デジタルデータ

など、本人の行動や事件前後の状況を確認する手段があります。

遺体がなくても、それ以外の証拠が残っている可能性があります。

実際、裁判所にも遺体のない殺人事件で有罪判決が確定した事例があります。

遺体が見つかれば捜査はどう変わる?

遺体なき殺人として捜査されていた事件でも、後に遺体や遺骨が見つかる場合があります。

そうすると、新しい情報が得られる可能性があります。

DNAで身元を確認できる

骨などからDNA型を取得できれば、本人確認につながる場合があります。

損傷を確認できる

骨に外傷が残っていれば、死亡前後の状況を考える手掛かりになります。

死亡時期を考える材料になる

遺体の状態や発見場所などから、死亡時期の推定に役立つ場合があります。

白骨遺体から何が分かるのかはこちらで詳しく解説しています。

白骨化した遺体から何がわかる?DNA・身元・死亡時期・死因の鑑定を解説

立件と有罪は同じではない

ここもニュースを見るときに重要です。

「立件された」

「逮捕された」

「起訴された」

「有罪になった」

は、すべて同じ意味ではありません。

捜査

警察などが犯罪の疑いについて調べる段階です。

逮捕

法律上の要件に基づき、一定期間身体を拘束して捜査する手続きです。

起訴

検察官が裁判所に刑事裁判を求めることです。

有罪

裁判所が証拠を検討し、犯罪が成立すると認定することです。

遺体なき殺人の場合も、この流れの中で証拠が厳しく検討されます。

まとめ

遺体が発見されていなくても、殺人事件として立件・起訴され、有罪になる可能性はあります。

ポイントをまとめると、

  • 「遺体なき殺人」は正式な罪名ではない
  • 遺体がなくても殺人罪の成立自体が否定されるわけではない
  • まず被害者が死亡していることを証明する必要がある
  • 大量の血痕などが重要な証拠になる場合がある
  • 防犯カメラやスマホも行動確認に使われる
  • 被害者の生活痕跡が突然途絶えたことも状況証拠になる
  • 自白だけを唯一の証拠として有罪にはできない
  • 自白と血痕などの客観的証拠を照合する
  • 遺体がなくても死因以外の証拠全体から殺人を立証できる場合がある
  • 遺体の処分を証明しても、それだけで殺害した証明にはならない
  • 複数の独立した証拠が同じ結論を示しているかが重要

という点が重要です。

ニュースで、

「遺体は見つかっていないが殺人罪で起訴された」

と聞くと、

「遺体がないのにどうやって?」

と思うかもしれません。

しかし刑事裁判で重要なのは、

遺体が存在するかだけではなく、証拠全体から犯罪事実を合理的に立証できるか

です。

遺体は極めて重要な証拠ですが、

遺体がなければ絶対に殺人事件にできないわけではない

ということです。

関連記事

参考

  • 裁判所「最高裁判所において関与した主要な裁判」
  • 法務省「取調べに関する事例集」
  • 日本国憲法 第38条
  • 刑事訴訟法 第319条
タイトルとURLをコピーしました