家族が突然いなくなったとき、
「行方不明届を出せば警察がすぐ捜してくれる?」
「大人が自分の意思で家を出た場合でも捜索される?」
「スマホの位置情報や防犯カメラまで調べるの?」
と疑問に思う人は多いでしょう。
ニュースでも、
「家族から行方不明届が出されていた」
という言葉をよく耳にします。
しかし、行方不明届を出したからといって、すべてのケースで大規模な捜索が始まるわけではありません。
警察は、
- 年齢
- 健康状態
- 行方不明になった状況
- 犯罪に巻き込まれた可能性
- 自殺のおそれ
- 自力で帰宅できる状態か
などを確認し、危険性を判断します。
特に生命や身体に危険があると判断される人は、**「特異行方不明者」**として重点的な発見活動の対象になる場合があります。
この記事では、行方不明届を出すと警察は何をするのか、通常の家出との違い、事件性が疑われる場合の捜査までわかりやすく解説します。
行方不明届とは?
行方不明届は、家族などの所在が分からなくなった場合に、警察へ行方不明であることを届け出る制度です。
以前は「家出人捜索願」などと呼ばれることもありましたが、現在は「行方不明者届」という名称が使われています。
行方不明になった理由は問いません。
たとえば、
- 自分の意思で家を出た
- 連絡が突然取れなくなった
- 認知症の人が外出したまま戻らない
- 子どもが行方不明になった
- 事故や犯罪に巻き込まれた可能性がある
など、さまざまなケースがあります。
重要なのは、
「本人が自分から出て行った可能性があるから届出できない」わけではない
ということです。
行方不明届は誰が出せる?
行方不明届は、誰でも無関係な人について出せるわけではありません。
一定の関係がある人が届け出ます。
配偶者や親族
代表的なのは、
- 配偶者
- 親
- 子
- 兄弟姉妹
- その他の親族
などです。
法律上の婚姻届を出していなくても、事実上の婚姻関係にある人が届出人になれる場合があります。
同居人や監護している人
親族でなくても、
- 同居している人
- 行方不明者を現に監護している人
などは届出できる場合があります。
雇用主など密接な関係がある人
兵庫県警察は、雇主など「社会生活において密接な関係を有する者」も、生命・身体の保護を求める目的で行方不明者届を出せると案内しています。
つまり、
必ず血縁関係がなければ届出できないわけではありません。
行方不明届はいつ出せる?
「行方不明になって24時間経たないと警察は受け付けない」
という話を聞いたことがあるかもしれません。
しかし、日本では一律に24時間や48時間待たなければならないという決まりはありません。
特に危険が考えられる場合は、早く相談することが重要です。
子どもや高齢者はすぐ相談する
小さな子どもや認知症の高齢者などは、自力で安全を確保することが難しい場合があります。
時間が経つほど危険が高くなるため、すぐ警察へ連絡します。
犯罪や事故が疑われる場合も早く相談する
たとえば、
- 不自然なメッセージを残している
- 財布やスマホを残したまま消えた
- 車だけ見つかった
- 普段なら絶対に連絡を絶たない
- 誰かから脅されていた
- 自殺をほのめかしていた
など、通常と違う事情があれば警察へ伝えます。
危険が差し迫っている場合は110番します。
警察は行方不明届を受けると何を確認する?
行方不明届を受理すると、警察は発見活動に必要な情報を確認します。
単に、
「家族がいなくなりました」
だけで終わるわけではありません。
行方不明者の基本情報
警察では、
- 氏名
- 年齢
- 性別
- 住所
- 職業
- 身体的特徴
などを確認します。
発見時に本人かどうかを確認するためにも必要な情報です。
最後に確認された日時と場所
非常に重要なのが、
最後にいつ、どこで確認されたか
です。
たとえば、
「朝7時に自宅を出た」
「午後3時に駅の防犯カメラに映っていた」
など、最後の足取りが捜索の出発点になります。
服装や持ち物
行方不明になったときの、
- 服装
- バッグ
- 靴
- 車
- 自転車
なども確認されます。
写真があれば、届出時に持参すると役立ちます。
警視庁も行方不明者届を出す際、行方不明者の写真や関係資料を持参するよう案内しています。
行方不明者は全員同じように捜索される?
ここが行方不明届を理解するうえで重要です。
すべての行方不明者について、同じ規模の捜索が行われるわけではありません。
警察は状況を確認し、危険性を判断します。
通常の行方不明者
成人が自らの意思で家を出たとみられ、生命・身体への危険を示す事情がない場合などです。
この場合でも行方不明者として登録され、警察活動の中で発見につながることがあります。
ただし、常に大人数の警察官が捜索するという意味ではありません。
特異行方不明者
生命や身体に危険が生じるおそれがあるなど、特に迅速な発見が必要と判断された人は「特異行方不明者」とされます。
この判断によって、警察の対応も変わってきます。
特異行方不明者とは?
「特異」と聞くと、変わった行方不明事件という意味に感じるかもしれません。
しかし、そういう意味ではありません。
警察が、
生命・身体に危険が生じるおそれがあり、迅速な発見が必要
と判断する行方不明者を指します。
犯罪に巻き込まれた可能性がある人
誘拐や監禁など、犯罪によって生命や身体に危険が及んでいる可能性がある場合です。
この場合は単なる家出として扱うのではなく、事件性についても確認されます。
自殺のおそれがある人
遺書を残している、自殺をほのめかしていたなどの事情がある場合も、生命に危険があります。
こうした情報は届出時に必ず警察へ伝えることが重要です。
自分で身を守ることが難しい人
たとえば、
- 幼い子ども
- 認知症の人
- 自救能力が乏しい人
などです。
認知症による行方不明について警察庁は、生命・身体への危険を踏まえ、迅速な発見・保護活動を行うよう定めています。
警察はどこまで捜す?
「警察は実際に何をしてくれるの?」
という部分が最も気になるところでしょう。
具体的な活動は事件ごとに異なります。
警察のシステムに情報を登録する
行方不明者届を受理すると、氏名や住所など必要な情報が警察の情報システムに登録されます。
これにより、別の地域で本人が確認された場合などに、行方不明者であることが分かる可能性があります。
周辺を捜索する
生命への危険が高く、まだ近くにいる可能性が高い場合には、周辺の捜索が行われることがあります。
特に子どもや認知症の高齢者などでは、初動が重要になります。
他の警察署と情報共有する
行方不明者が県外などへ移動する可能性もあります。
そのため、必要に応じて他の警察署や都道府県警察と情報を共有しながら発見活動が行われます。
スマホの位置情報まで調べる?
ここはよく検索される疑問です。
「行方不明届を出したら、警察がすぐスマホのGPSを追跡してくれる」
と思っている人もいます。
しかし、必ず自動的に位置情報を取得できるわけではありません。
通信事業者などが持つ情報を取得するには、事件性や緊急性、法的な手続きなどが関係します。
つまり、
行方不明届を出しただけで、家族が自由に警察経由でスマホの位置を知れるわけではありません。
一方、事件捜査などでは、スマホや各種データが重要な手掛かりになることがあります。
警察がスマホなどから行動をどのように確認するのかについては、
警察はどうやって行動履歴を特定する?スマホやデータ分析の仕組みを解説
で詳しく解説しています。
防犯カメラは確認される?
防犯カメラも、行方不明者の足取りを確認する重要な手掛かりになる場合があります。
たとえば、
- 自宅周辺
- 駅
- コンビニ
- 商業施設
- 道路
などの映像から、その人がどの方向へ移動したのか分かる可能性があります。
ただし、
行方不明届が出されたら周辺の防犯カメラをすべて警察が確認する
という単純な仕組みではありません。
事件性、緊急性、最後に確認された場所などをもとに必要な捜査・発見活動が行われます。
車や交通機関の記録は調べられる?
行方不明者が車を利用していた場合、その車自体が重要な手掛かりになります。
また、事件捜査に発展した場合には、
- 防犯カメラ
- 車両の記録
- 交通関係の情報
- スマートフォン
など複数の情報から足取りが確認されることがあります。
ただし、どこまで調べるかは個別の事案によって異なります。
警察が持っているすべてのデータを、行方不明届を出しただけで自動的に検索するわけではありません。
大人が自分の意思で家出した場合はどうなる?
成人には、自分の意思で生活する場所を選ぶ自由があります。
そのため、
「家族が帰ってこないから無理やり連れ戻してほしい」
という理由だけで警察が本人を強制的に家へ戻すわけではありません。
発見されても居場所を家族へ伝えない場合がある
成人が自分の意思で家を離れていて、安全が確認された場合、本人が家族への居場所の通知を望まないことがあります。
行方不明者発見活動は、家族の希望だけではなく本人の権利にも配慮して行われます。
そのため、
「届出をした家族なら必ず現在地を教えてもらえる」
とは限りません。
ただし犯罪やDVなどが関係すれば別
本人が誰かから逃げている場合などは、単なる家出とは事情が違います。
特にDV、ストーカー、虐待などが関係している場合、本人の安全を守るため居場所の扱いには慎重な配慮が必要になります。
行方不明者が事件に巻き込まれた可能性が出てきたら?
行方不明者届は、必ずしも刑事事件の捜査と同じものではありません。
しかし、発見活動の途中で事件性を示す情報が出てくれば状況は変わります。
家族などから詳しく事情を聞く
最後に本人を見た人、同居家族、知人などから事情を確認することがあります。
たとえば、
- 最後に会った日時
- 当時の様子
- トラブルの有無
- 行きそうな場所
- 連絡の内容
などです。
これは行方不明になった経緯を確認するために重要です。
説明と客観的な記録を照らし合わせる
人の記憶や証言だけでなく、
- 防犯カメラ
- スマホ
- 車
- 各種記録
など、客観的な情報が重要になる場合があります。
説明と客観的な記録が一致しているかどうかが確認されることもあります。
犯罪の疑いがあれば刑事事件として捜査される
行方不明者が、
- 誘拐された可能性
- 暴行を受けた可能性
- 殺害された可能性
などが具体的に疑われるようになれば、単なる発見活動ではなく刑事事件としての捜査が行われることがあります。
つまり、
行方不明届を出した時点では事件でなくても、その後の情報によって捜査の性質が変わることがある
ということです。
行方不明者が長期間見つからない場合はどうなる?
数日で見つかる人もいれば、長期間行方が分からないケースもあります。
長期間経過したからといって、届出そのものがなかったことになるわけではありません。
別の場所で発見につながることがある
警察の活動の中で本人が確認された場合、行方不明者の登録情報と照合されることがあります。
県外など遠い場所で発見される可能性もあります。
身元不明者との照合が行われる場合がある
身元の分からない人や遺体が発見された場合、行方不明者の情報との照合が行われることがあります。
特異行方不明者については、DNA型鑑定に用いる資料の仕組みも設けられています。
この部分は、
「骨や遺体の一部しか見つからなくても、どうやって身元を特定するの?」
という別の大きな疑問につながります。
家族が行方不明になったとき準備しておきたいもの
実際に行方不明者届を出す場合、警察へ伝えられる情報が多いほど状況を説明しやすくなります。
最近の写真
できるだけ現在の姿に近い写真を準備します。
全身写真などもあれば、服装や体格を確認する手掛かりになります。
最後に着ていた服装
- 上着
- ズボン
- 靴
- 帽子
- バッグ
など、分かる範囲で整理します。
最後に連絡した記録
電話、メール、メッセージアプリなどで最後に連絡した日時も重要です。
削除せず、そのまま残しておきます。
行きそうな場所や交友関係
普段よく行く場所、知人、勤務先、以前住んでいた場所なども伝えます。
本人の行動範囲を考える手掛かりになるためです。
行方不明届と捜査は同じではない
行方不明届について一番誤解されやすいのがここです。
行方不明届を出すこと=誰かが犯罪の容疑者になる
わけではありません。
行方不明者発見活動の目的は、まず行方不明者の生命・身体を保護し、発見することです。
一方で、調べていく中で不自然な事情や犯罪の可能性が出てくれば、刑事事件の捜査につながることがあります。
したがって、
発見活動と犯罪捜査は重なることはあっても、最初から同じものではない
と考えると分かりやすいでしょう。
まとめ
行方不明届を出した場合、警察は本人の状況や行方不明になった経緯を確認し、必要な発見活動を行います。
ポイントをまとめると、
- 行方不明届は24時間や48時間待たなくても相談できる
- 配偶者や親族だけでなく一定の関係者も届け出られる
- 写真や最後に確認された場所などを警察へ伝える
- 全員が同じ規模で捜索されるわけではない
- 生命・身体への危険がある場合は特異行方不明者となることがある
- 子ども・認知症の人・自殺のおそれがある人などは迅速な対応が重要
- 行方不明届だけでスマホの位置を自由に追跡できるわけではない
- 防犯カメラやスマホなどが手掛かりになる場合がある
- 成人が自分の意思で家を出た場合、家族に居場所が伝えられないこともある
- 事件性が判明すれば刑事事件としての捜査へ発展する場合がある
という点が重要です。
ニュースで「行方不明届が出されていた」と聞くと、
「それなら警察は全部調べていたはず」
と思ってしまうことがあります。
しかし実際には、行方不明者の状況や危険性によって警察の発見活動は変わります。
そして、発見活動の途中で新しい事実が判明すれば、それまで単なる行方不明だった事案が事件として捜査されることもあります。
行方不明届は単なる「家出の届出」ではなく、行方が分からなくなった人の生命や身体を守り、発見につなげるための制度なのです。
関連記事
参考
- 警察庁「行方不明者発見活動に関する規則」
- 警察庁「行方不明者発見活動に関する細則」
- 警視庁「行方不明者相談のご案内」
- 兵庫県警察「行方不明者届に関するQ&A」

