家族が自宅で突然亡くなった場合、
「警察が来るの?」
と疑問に思う人は多いでしょう。
またニュースでは、
- 検視
- 検案
- 司法解剖
という言葉が出てきますが、
「全部同じことでは?」
と思ってしまいますよね。
実際には、この3つは意味が違います。
さらに、
突然死したから必ず警察の捜査になる
わけでもありません。
生前から医師の診療を受けていた病気による死亡と判断できる場合と、死因が分からない状態で発見された場合では対応が変わります。
この記事では、
- 突然死すると警察が来るのか
- 検視とは何か
- 検案とは何か
- 司法解剖はいつ行われるのか
- 死亡診断書と死体検案書は何が違うのか
を整理して解説します。
突然死したら必ず警察が来る?
結論からいうと、
突然死したというだけで必ず警察が来るわけではありません。
重要なのは、
死亡原因を医学的に説明できるか
と
死体に異状が認められるか
です。
生前から治療していた病気で死亡した場合
たとえば、
- がん
- 心臓病
- その他の重い病気
について医師が継続して診療しており、その病気に関連して死亡したと判断できる場合があります。
この場合、医師が死亡後に必要な確認を行い、死亡診断書を交付できるケースがあります。
厚生労働省は、医師が生前に診療していた傷病に関連して死亡したと認める場合には死亡診断書を交付するとしています。
死因が分からない状態で発見された場合
一方、
- 自宅で倒れて死亡していた
- 長期間連絡が取れず死亡状態で発見された
- これまで健康だった人が突然死亡した
- 外傷など不自然な点がある
といった場合には、死亡原因をその場で説明できないことがあります。
その場合、医師による検案や警察による確認が行われることがあります。
「突然死」と「異状死」は同じではない
ここは混同しやすいポイントです。
突然亡くなったことと、法律上・実務上「異状」があると判断されることは同じではありません。
突然死は死亡までの時間についての表現
一般に突然死という言葉は、
それまで生活していた人が急に死亡すること
を表す言葉として使われます。
原因は病気の場合もあります。
異状があるかどうかは医師が判断する
厚生労働省は、医師が死体を検案し異状を認めた場合には、医師法第21条に基づいて24時間以内に所轄警察署へ届け出る必要があるとしています。
つまり、
突然死=自動的に異状死
ではありません。
個々の状況から判断されます。
死亡診断書と死体検案書の違い
警察が関わるかどうかを理解するには、
死亡診断書
と
死体検案書
の違いを知っておくと分かりやすいです。
死亡診断書
医師が生前に診療していた傷病に関連して死亡したと判断できる場合に交付します。
たとえば、長く治療していた病気による死亡などです。
なお、
「最後の診察から24時間以上経っていたら死亡診断書を書けない」
というのは誤解です。
厚生労働省は、死亡後に改めて診察し、生前診療していた傷病に関連する死亡と判断できれば、最後の診察からの時間にかかわらず死亡診断書を交付できると説明しています。
死体検案書
それ以外の場合に医師が検案を行って交付するのが死体検案書です。
たとえば、
- 生前にその医師の診療を受けていなかった
- 診療していた病気とは別の原因で死亡した
- 死亡した状態で発見され死因が分からない
などの場合です。
厚生労働省によると、死亡診断書と死体検案書は、死亡を医学的・法律的に証明する文書という点で効力に違いはありません。
検案とは?
「検案」という言葉は、ニュースではあまり詳しく説明されません。
検案とは簡単にいうと、
医師が遺体を医学的に調べ、死亡原因などを判断すること
です。
遺体の状態を確認する
医師は、
- 外傷
- 死後変化
- 身体の状態
- 病歴
- 発見状況
などを確認します。
死因を判断する
それらの情報から、
「何によって死亡した可能性が高いか」
を判断します。
ただし、外から見ただけでは死因が分からない場合もあります。
その場合には、解剖や追加検査が必要になることがあります。
検視とは?
検案と名前が似ていますが、検視は別のものです。
検視は主に、
死体について犯罪との関係がないかを確認する手続き
です。
犯罪の可能性を確認する
警察などは、
- 発見場所
- 遺体の状態
- 外傷
- 周囲の状況
- 関係者の説明
などを確認します。
その目的の一つは、
事件性を見落とさないこと
です。
警察庁の検視規則では、犯罪による死亡かどうかを慎重に判断することが求められています。
検案と検視は目的が違う
非常に簡単に分けると、
検案=医学的に死因を調べる
検視=犯罪との関係を確認する
という違いがあります。
ただし実際の現場では、警察と医師がそれぞれの立場から情報を確認しながら進めます。
自宅で突然死亡すると警察が来ることがある理由
「病院ではなく自宅で亡くなると警察が来る」
という話を聞くことがあります。
これは、
病院以外で死亡したこと自体が犯罪扱いされるから
ではありません。
死因をその場で確認できないことがある
自宅で突然死亡すると、
- いつ死亡したのか
- 何が原因だったのか
- 外傷はないか
- 事故ではないか
などを確認する必要があります。
異状があれば警察へ届け出る
医師が検案して異状があると判断した場合は警察へ届け出ます。
警察は、
「犯罪による死亡ではないか」
という可能性も含めて確認します。
つまり、
警察が来た=犯罪が起きた
という意味ではありません。
事件ではないことを確認するために調べる場合もあります。
警察は何を確認する?
警察が死体を取り扱う場合、単に遺体だけを見るわけではありません。
周辺の状況も重要です。
発見された場所
たとえば、
- 自宅
- 車内
- 屋外
- 水中
など、発見状況によって考えられる原因は変わります。
遺体の状態
外傷や不自然な点がないかを確認します。
関係者の説明
家族などから、
- 最後に生存を確認した日時
- 持病
- 最近の体調
- 当日の様子
などを聞く場合があります。
周辺の状況
必要に応じて、
- 薬
- 血痕
- 室内の状況
- 防犯カメラ
などが確認されることもあります。
犯罪の可能性が出れば、本格的な捜査へ進む場合があります。
司法解剖とは?
検視や検案をしただけでは死因が分からない場合、
解剖
が行われることがあります。
その一つが司法解剖です。
犯罪との関係を調べるための解剖
司法解剖は、犯罪との関連が疑われる死体について、
- 死因
- 損傷
- 死亡時期
などを詳しく調べる目的で行われます。
体の内部を確認することで、外からは分からなかった異常が見つかることがあります。
裁判官の許可を得て行われる
犯罪捜査として司法解剖を行う場合には、裁判官の鑑定処分許可状など必要な法的手続きに基づいて行われます。
警察庁の検視規則関係資料でも、犯罪の疑いがあり解剖が必要な場合には、裁判官の許可を得て鑑定人に解剖を行わせることが示されています。
突然死なら必ず司法解剖される?
いいえ。
突然死した人すべてが司法解剖されるわけではありません。
死因が明らかな場合
病歴や遺体の状態などから死因が明確に判断できれば、司法解剖まで行われない場合があります。
事件性が疑われる場合
一方、
- 外傷がある
- 周囲の状況が不自然
- 関係者の説明と合わない
- 犯罪による死亡が疑われる
などの場合には、より詳しい確認が必要になります。
犯罪性がなくても解剖される場合がある
日本には司法解剖以外にも、死因究明を目的とした解剖の制度があります。
つまり、
解剖=必ず殺人事件
というわけでもありません。
検視・検案・司法解剖の違い
ここまでの違いを整理すると分かりやすくなります。
検視
主に犯罪との関係を確認するための手続きです。
警察などが死体や現場状況を確認します。
検案
医師が遺体を医学的に確認し、死因などを判断します。
必要に応じて死体検案書を交付します。
司法解剖
犯罪との関連が疑われる場合などに、遺体の内部を詳しく調べる解剖です。
つまり、
検視=事件性
検案=医学的死因
司法解剖=さらに内部まで詳しく調べる
と考えると大まかな違いが分かります。
検視をしたら死因まで分かる?
検視だけで必ず死因まで分かるわけではありません。
検視の主な目的は犯罪との関係を確認することだからです。
死因そのものは医師による検案や解剖、その他の検査などから判断されます。
そのためニュースで、
「警察が検視したが、死因は不明」
という状態もあり得ます。
司法解剖しても死因が分からないことはある?
あります。
司法解剖は強力な死因究明手段ですが、万能ではありません。
たとえば、
- 長期間経過している
- 白骨化している
- 臓器が失われている
- 特徴的な所見がない
などの場合には、死因が分からないことがあります。
詳しくはこちらで解説しています。
死因不明とはどういう意味?司法解剖をしても分からないことがある理由
特に白骨化している場合には、死因を調べるための情報が大きく失われていることがあります。
白骨化した遺体から何がわかる?DNA・身元・死亡時期・死因の鑑定を解説
も参考にしてください。
突然死で警察が来ても事件とは限らない
家族が突然亡くなり、さらに警察まで来ると、
「事件を疑われているの?」
と不安になるかもしれません。
しかし、
警察が確認することと、犯罪があったと判断されることは同じではありません。
死亡の状況が分からない以上、
「事件ではないこと」
も含めて確認する必要があります。
犯罪性なしと判断される場合もある
警察や医師が確認した結果、
- 病死
- 事故
- その他犯罪によらない死亡
と判断されることがあります。
犯罪の疑いが出れば捜査へ進む
一方で、
- 不自然な傷
- 説明との矛盾
- 周辺の証拠
などから犯罪の可能性が出れば、刑事事件としての捜査につながります。
病死と判断されていたら後から捜査されない?
一度病死と考えられたケースでも、後から新しい情報が出れば状況が変わる可能性はあります。
ただし、
「以前突然死した人がいた」というだけで、後から自動的に事件として再捜査されるわけではありません。
捜査には、
- 新しい証拠
- 新しい証言
- 犯罪を疑わせる具体的事情
などが重要になります。
突然死という事実だけから、犯罪との関係を推測することはできません。
遺体が発見された事件ではどう進む?
行方不明だった人の遺体が後から発見された場合も、基本的な考え方は同じです。
まず身元を確認する
DNAや歯科記録などを使って、
「誰なのか」
を確認します。
遺体の一部しか見つからなくても身元はわかる?DNA鑑定と個人識別の仕組みを解説
で詳しく解説しています。
死因を調べる
次に、
「なぜ死亡したのか」
を調べます。
犯罪との関係を調べる
さらに、
- 最後に会った人物
- 防犯カメラ
- スマホ
- 車
- 関係者の供述
などを確認し、死亡までの経緯を調べる場合があります。
身元が分かることと、死因が分かること、犯人が分かることは、それぞれ別の段階です。
突然死と聞いてすぐ犯罪を疑わない
ニュースで、
「以前、家族も突然死していた」
という情報が出ると、
「その死亡も怪しいのでは?」
と思いたくなることがあります。
しかし、
突然死したという事実だけでは、犯罪だったと判断する根拠にはなりません。
心臓病など自然な原因による突然死もあります。
重要なのは、
- 当時の死因
- 医師の判断
- 検案の結果
- 新しい証拠の有無
などです。
ニュースで過去の突然死が報じられていても、現在の事件との関連が確認されていなければ、両者を結び付けて断定するべきではありません。
まとめ
突然死した場合でも、必ず警察が捜査するわけではありません。
重要なのは、
死亡原因を医学的に説明できるか、異状が認められるか
です。
ポイントをまとめると、
- 突然死しただけで必ず警察が来るわけではない
- 生前の診療内容と関連する死亡なら死亡診断書が交付される場合がある
- 死因が分からない場合などは死体検案書が使われる
- 異状が認められた場合は警察への届出が必要
- 検案は医師が医学的に死亡原因などを調べる
- 検視は主に犯罪との関係を確認する
- 司法解剖は犯罪との関連を調べるために行われる解剖の一つ
- 突然死した人全員が司法解剖されるわけではない
- 警察が確認しても事件とは限らない
- 司法解剖しても死因が分からない場合はある
- 過去に突然死したという事実だけで犯罪だったとは判断できない
という点が重要です。
ニュースで、
「突然死」「検視」「司法解剖」
という言葉を聞くと、すぐ事件を連想してしまうかもしれません。
しかし実際には、
病気による死亡なのか、事故なのか、犯罪が関係しているのかを一つずつ確認するための制度
があります。
検視・検案・司法解剖の違いを知っておくと、事件報道を見るときにも、何が分かっていて何がまだ分かっていないのかを判断しやすくなります。
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