事件のニュースでは、
「スマートフォンの位置情報などから足取りを調べた」
と報じられることがあります。
すると、
「スマホの位置情報ってGPSのこと?」
「電源を切ったら場所は分からなくなる?」
「過去にいた場所まで調べられるの?」
「警察はスマホだけで行動を全部分かるの?」
と疑問に思いますよね。
結論からいうと、
スマホの位置情報=GPSだけ
ではありません。
捜査では事件や手続きに応じて、
- 端末に残る記録
- 通信に関する記録
- 基地局などとの関係
- アプリやサービスに保存された情報
- 防犯カメラ
- その他のデジタル記録
など、複数の情報を組み合わせて行動履歴を確認することがあります。
また、
電源を切ったことと、それ以前に残された記録が消えることは別です。
この記事では、スマホの位置情報とは何なのか、電源を切った場合に何が変わるのか、警察がどのような記録を捜査材料として利用するのかを解説します。
スマホの「位置情報」にはどんな種類がある?
スマホの場所を示す情報には、複数の種類があります。
そのため「位置情報」という言葉だけでは、何を指しているのか分からないことがあります。
GPSなど端末が取得する位置情報
スマートフォンにはGPSなどを使って現在地を把握する機能があります。
地図アプリやナビゲーションなどで使われる位置情報です。
端末やサービスの設定によっては、位置に関係する履歴が保存される場合もあります。
通信に伴って生じる位置に関する情報
携帯電話は通信するとき、携帯電話会社のネットワークを利用します。
そのため通信に関する記録から、
ある時間帯にどの地域周辺で通信していた可能性があるか
を考える材料が得られる場合があります。
ただし、GPSのように常に一点の正確な位置を示すものとは限りません。
スマホの電源を切ると何が変わる?
電源が切れている間は、通常の通信や位置情報取得の状態が変わります。
しかし、ここで注意したいのが、
電源を切った時点から過去の記録まで消えるわけではない
という点です。
電源が切れている間は新しい通信記録が生じにくくなる
端末が完全に電源オフになっていれば、通常の携帯電話通信は行われません。
そのため、その間に通常の通信によって新しい記録が生じる状況は限定されます。
電源を切る前の記録は別に残ることがある
たとえば、
- 最後に通信した時間帯
- それ以前の位置に関係する履歴
- アプリなどに保存された記録
がすでに存在していれば、
電源を切ったから自動的に過去まで消える
わけではありません。
ここは非常に重要です。
電源を入れた後の記録も手掛かりになる?
場合によってはなります。
捜査では、一つの時点だけを見るのではなく、時間の流れを確認します。
電源が切れる前後の記録を比較する
たとえば、
- ある時間まで記録がある
- その後記録が途切れる
- 別の時間から再び記録が現れる
という場合があります。
この間に何があったのかを、他の証拠と合わせて調べます。
防犯カメラなどで空白部分を補う
スマホの記録がない時間帯についても、
- 防犯カメラ
- 車両記録
- 交通機関の記録
- 目撃情報
などが残っている場合があります。
つまり、
スマホの記録が途切れた=足取りが完全に分からなくなる
とは限りません。
基地局の記録から何が分かる?
携帯電話は、周囲の基地局などを通じて通信します。
そのため通信記録が捜査材料になることがあります。
通信していた地域を考える材料になる
通信記録などから、
ある時間帯に一定の地域周辺で端末が使われていた可能性
を検討できる場合があります。
事件の時間帯や防犯カメラ映像などと照合することで、行動履歴を確認します。
GPSと同じ精度とは限らない
基地局に関する記録は、
「この建物のこの部屋にいた」
というレベルまで必ず示すものではありません。
基地局の配置や通信状況などによって、位置の絞り込みには幅があります。
そのため、
基地局記録=ピンポイントGPS
ではありません。
スマホ本体にはどんな記録が残る?
スマホそのものにも多くのデジタル情報が保存されています。
事件捜査では、適法な手続きの下で端末を解析する場合があります。
通話やメッセージなどの記録
端末の状態によっては、
- 通話履歴
- メッセージ
- 連絡先
- 写真
- アプリの利用情報
などが捜査材料になる場合があります。
ただし、どの情報が取得できるかは端末やアプリの状態によって異なります。
写真などに位置情報が付いている場合もある
写真やその他のデータには、設定などによって、
- 撮影日時
- 位置に関する情報
- ファイル作成日時
などのメタデータが含まれる場合があります。
こうした情報も、行動履歴を考える材料になることがあります。
アプリの記録から場所が分かることはある?
スマホでは、多くのサービスが位置や時刻に関係する情報を利用しています。
そのため事件によっては、アプリやサービス側に残る情報が捜査材料になる場合があります。
地図や移動に関係するサービス
地図、ナビゲーション、交通などのサービスでは、利用状況に応じて位置に関係する情報が残る場合があります。
ただし、
すべての利用者について常に完全な移動履歴が保存されている
という意味ではありません。
SNSやその他のサービス
投稿や写真などに、
- 投稿日時
- 位置情報
- 周辺施設
などの情報が含まれる場合があります。
また、公開された投稿そのものが行動の手掛かりになるケースもあります。
通信履歴から何が分かる?
通信履歴も、行動を確認する材料になることがあります。
ただし「通信履歴」という言葉には複数の種類があります。
通話や通信の時間帯を確認する
記録から、
- いつ通信したか
- どの時間帯に利用があったか
などを確認できる場合があります。
事件発生時刻との関係を調べる材料になります。
通信履歴だけでは本人の行動を確定できない
重要なのは、
スマホの記録=必ず本人の行動
ではないことです。
端末を別の人が持っていた可能性もあります。
そのため、
- 防犯カメラ
- 目撃情報
- 指紋
- DNA
- 供述
などと照合します。
GPSの記録があれば本人の居場所は確定?
GPSは非常に有力な位置情報ですが、
GPSだけで本人がその場所にいたと必ず確定するわけではありません。
分かるのは基本的に端末の位置
位置情報が示しているのは、
スマートフォンなどの端末がその場所にあった可能性
です。
本人が常に端末を持っていたとは限りません。
他の証拠で本人との結び付きを確認する
たとえば、
- 防犯カメラにも本人が映っている
- 端末を使用した記録がある
- 車両の移動とも一致する
など、別の記録と組み合わせます。
複数の証拠が同じ行動を示すほど、行動履歴を確認する材料が増えます。
防犯カメラとスマホ記録はどう組み合わせる?
防犯カメラとデジタル記録は、相互に補う関係になる場合があります。
映像の時刻と位置記録を比較する
たとえば、
「午後9時ごろ、この場所に人物が映っている」
という防犯カメラ映像があったとします。
同じ時間帯にスマホに関係する記録もその地域と整合していれば、行動履歴を確認する一つの材料になります。
片方だけでは分からない部分を補う
映像がない道路でもスマホなどの記録が残っている場合があります。
逆に、スマホの記録がない時間帯でも防犯カメラに人物が映っている場合があります。
そのため、
複数の記録を時系列に並べる
ことが重要です。
防犯カメラの映像はどこまで追える?警察はどうやって足取りをつなぐのか解説
でも詳しく解説しています。
電源を切った時間そのものは分かる?
端末や記録の状態によって、動作の変化を示す情報が確認できる場合はあります。
ただし、
どのスマホでも必ず「○時○分に電源を切った」と完全な履歴が残る
と一律には言えません。
記録が途切れた時刻が手掛かりになることがある
通信やアプリの利用記録などが、
ある時刻を境に突然なくなっていれば、
「この時間帯に何らかの変化があったのではないか」
と考える材料になることがあります。
他の証拠と合わせて判断する
その時刻に、
- 防犯カメラに映っていた
- 車で移動していた
- 別の端末を使用していた
などの情報があれば、状況をさらに絞っていきます。
スマホがなくても行動履歴は調べられる?
場合によっては可能です。
現代の行動履歴は、スマホ一台だけに残るわけではありません。
街や施設の記録を調べる
たとえば、
- 防犯カメラ
- 交通機関
- 店舗
- 車両
などに、時間や場所に関する記録が残っている場合があります。
人の証言や物的証拠も使う
さらに、
- 目撃者
- 血痕
- 指紋
- DNA
- 所持品
なども行動を考える材料になります。
つまり、
スマホがない=行動履歴を調べられない
ではありません。
警察は自由にスマホや位置情報を調べられる?
いいえ。
スマートフォンや位置情報には強いプライバシー性があります。
捜査でも法的な手続きが必要になる場合があります。
強制的な捜索や差押えには令状が必要になる
裁判所は、住居への立入りや所有物の差押えなどの強制処分には、原則として裁判官が発する令状が必要だと説明しています。
スマホそのものを差し押さえて解析する場合なども、事件や状況に応じた適法な手続きが必要になります。
GPSによる継続的な位置把握にも制約がある
最高裁は2017年、本人の承諾なく車両へGPS端末を取り付けて継続的に位置情報を把握する捜査について、プライバシーを侵害する強制処分に当たり、令状なく行うことはできないとの判断を示しました。
つまり、
位置情報だから警察が自由に何でも取得できる
わけではありません。
スマホ記録は供述の裏付けになる?
なる場合があります。
本人の説明と、客観的なデジタル記録を比較できます。
供述した場所と記録を比較する
たとえば、
「その時間は自宅にいた」
という供述があった場合、
- 防犯カメラ
- スマホに関する記録
- 車両記録
などと照合します。
記録と供述が一致するか確認する
供述内容と複数の客観的記録が一致すれば、供述を裏付ける材料になる場合があります。
逆に大きく矛盾すれば、
「説明は本当に正しいのか」
を確認する必要があります。
自供だけで有罪になる?裏付け捜査とは何をするのかをわかりやすく解説
でも詳しく解説しています。
スマホの位置情報で分かること・分からないこと
スマホには多くの記録がありますが、万能ではありません。
分かる可能性があること
事件や取得できた資料によって、
- 端末が通信していた時間帯
- 位置に関係する記録
- 通話や利用の時刻
- 写真などの作成日時
- 一部のアプリ利用
- 移動履歴を考える手掛かり
などが得られる場合があります。
スマホだけでは分からないこと
一方、
- 必ず本人が端末を持っていたか
- その場所へ行った目的
- 記録がない時間帯の行動すべて
- 事件の全経緯
- それだけで犯罪を行ったか
までスマホだけで断定することはできません。
他の証拠との照合が必要です。
まとめ
スマートフォンの位置情報はGPSだけではありません。
事件捜査では、さまざまなデジタル記録を組み合わせて行動履歴を確認します。
ポイントをまとめると、
- スマホの位置情報には複数の種類がある
- GPSと通信に関する位置情報は性質が異なる
- 電源を切ると通常の通信状態は変わる
- 電源を切る前の過去記録まで自動的に消えるわけではない
- 記録が途切れた前後を比較することがある
- 基地局に関する記録は行動地域を考える材料になる場合がある
- 基地局記録は必ずGPSと同じ精度ではない
- スマホ本体のデータが捜査材料になる場合がある
- 写真などに日時や位置に関する情報が含まれることがある
- アプリやサービス側に記録が残る場合もある
- GPSが示すのは基本的に端末の位置
- 端末の位置と本人の位置は必ず同じとは限らない
- 防犯カメラなど他の記録と組み合わせる
- スマホがなくても別の証拠から行動を調べられる
- スマホや位置情報の取得には適法な捜査手続きが必要になる
- スマホ記録は供述の裏付けとして使われる場合がある
という点が重要です。
「スマホの電源を切ったら位置情報は分からなくなる?」
という疑問は、
その瞬間に新しい通信が生じるか
という話と、
それまでにどんな記録が残っているか
という話を分けて考える必要があります。
実際の捜査では、
スマホ一台から現在地をずっと見ているのではなく、過去に残された複数の記録を防犯カメラや車両情報、供述などと照合しながら時系列を組み立てる
ことが重要になります。
スマートフォンは、単なる電話ではなく、
行動の一部が複数の形で記録される可能性があるデジタル機器
として、現代の捜査で重要な証拠の一つになっているのです。
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