住宅ローンのシミュレーションをしていると、
「ボーナス払いを入れると月々の返済が安くなる」
ことがあります。
たとえば、毎月10万円だった返済が、ボーナス払いを併用すると、毎月7万円になる。
すると、
「これなら払えそう」
と思いますよね。
しかし、住宅ローンのボーナス払いについては、
「できるだけ使わない方がいい」
と言われることもあります。
なぜなのでしょうか。
結論からいうと、
ボーナス払いそのものが危険なのではありません。
注意したいのは、
「将来も今と同じボーナスが出る」ことを前提に、何十年もの返済計画を組むこと
です。
ボーナスが減っても、住宅ローンの返済額まで自動的に減ってくれるわけではありません。
この記事では、
- 住宅ローンのボーナス払いとは何か
- なぜ月々の返済が安く見えるのか
- なぜ危ないと言われるのか
- ボーナスがなくなったらどうなるのか
- ボーナス払いと繰上返済は何が違うのか
- ボーナス払いを使うなら何に注意するか
まで、家計に例えてわかりやすく解説します。
※住宅ローンの商品条件や返済方法の変更可否は金融機関によって異なります。実際の契約内容は利用する金融機関に確認してください。
- まず結論|ボーナス払いは「返済を後回しにしている」わけではない
- 家計に例えると「毎月の支払いを一部だけ夏と冬に移す」
- なぜボーナス払いを入れると「家が買えそう」に見える?
- ボーナス払いが危ないと言われる最大の理由
- 「ボーナス50万円だから20万円返済」は30年間続けられる?
- ボーナス払いを使うと総返済額も増えるの?
- ボーナス払いと繰上返済は何が違う?
- 家計の自由度で考えると違いが分かりやすい
- ではボーナス払いは絶対使わない方がいい?
- ボーナス払いを使うなら何を確認する?
- 子どもが大きくなる時期とボーナス返済が重なることもある
- ボーナス払いをやめることはできる?
- ボーナスが急になくなったらどうする?
- 昔の住宅ローンではボーナス払いが大きいケースもあった
- 「月8万円なら家賃と同じ」で判断しない
- 30秒でわかる|ボーナス払いはなぜ危ない?
- まとめ|「ボーナスがなくても払えるか」で考える
まず結論|ボーナス払いは「返済を後回しにしている」わけではない
最初に大きな誤解をなくしておきましょう。
毎月払う分とボーナス月に払う分を分けている
住宅ローンのボーナス払いとは、住宅ローンの一部を、
年2回などのボーナス月にまとめて返済する方法
です。
たとえば3000万円の住宅ローンを、毎月返済する部分と、ボーナス月に返済する部分に分けます。
フラット35でも、毎月払いに加えて6か月ごとのボーナス払いを設定でき、ボーナス返済部分は借入希望額の40%以内とされています。 (参考情報:フラット35)
「ボーナスが出たら余分に返す」のとは違う
ここが重要です。
ボーナス払いは、
ボーナスが出たら気が向いたときに多めに払う
という仕組みではありません。
あらかじめ、
「6月はこれだけ」
「12月はこれだけ」
と返済計画に組み込まれています。
つまり、
将来のボーナスを住宅ローン返済に予約している
ようなものです。
家計に例えると「毎月の支払いを一部だけ夏と冬に移す」
ボーナス払いは、家計に置き換えるとかなり分かりやすいです。
毎月10万円払う家計
たとえば住宅ローン返済が、毎月10万円だとします。
年間では、10万円×12か月=120万円です。
一部をボーナス月へ移す
これを、毎月7万円
ボーナス月に追加18万円×2回
としたとします。
通常月は7万円なので、
「毎月3万円も楽になった」
と感じます。
しかし年間で考えると、7万円×12か月=84万円
ボーナス追加分36万円
合計120万円
です。
単純化すれば、
年間の返済負担そのものが消えたわけではありません。
支払うタイミングを変えただけです。
なぜボーナス払いを入れると「家が買えそう」に見える?
ここがボーナス払いの大きな特徴です。
月々の数字が小さくなる
住宅購入では、
「毎月いくらなら払えますか?」
と考えることが多いですよね。
毎月12万円なら高い。
でも、毎月8万円なら何とか払えそう。
そこでボーナス払いを利用すると、
毎月の返済額だけを小さく見せることができます。
しかし住宅ローン総額が小さくなったわけではない
たとえば、3000万円借りること自体は変わっていません。
毎月返すか、一部を年2回にまとめるか、という違いです。
つまり、月々8万円だから「2400万円程度のローン」になったわけではありません。
3000万円借りているなら、借金は3000万円です。
ここを混同すると、
「意外と高い家でも買える」
と錯覚しやすくなります。
ボーナス払いが危ないと言われる最大の理由
最大の理由は、ボーナスが保証された収入ではないことです。
ボーナスは減ることがある
今、夏50万円、冬50万円のボーナスが出ていたとします。
しかし住宅ローンは、30年、35年と続きます。
その間には、
- 会社の業績悪化
- 転職
- 休職
- 育児
- 介護
- 働き方の変更
などが起こる可能性があります。
三菱UFJ銀行も、ボーナスは将来にわたって同じ金額が支給されるとは限らず、減額や不支給の可能性がある一方、住宅ローンのボーナス返済額は原則として契約時に決まっていると説明しています。 (参考情報:三菱UFJ銀行)
ボーナスがゼロでも住宅ローンはゼロにならない
ここが怖いところです。
今年の冬、会社から、
「業績悪化のためボーナスなし」
と言われたとします。
住宅ローン会社が、
「では冬のボーナス返済もなしでいいですよ」
としてくれるとは限りません。
契約上の返済日は来ます。
つまり、
収入だけ消えて、返済予定は残る
可能性があります。
「ボーナス50万円だから20万円返済」は30年間続けられる?
住宅ローンを組むときには、現在のボーナスだけを見がちです。
住宅購入時は収入が一番元気な時期かもしれない
30代夫婦で、
夫のボーナス60万円
妻のボーナス40万円
だったとします。
世帯として見ると、
「年200万円くらいボーナスがある」
ように感じます。
だから、ボーナス返済20万円×年2回でも問題なさそうです。
しかし10年後、
妻が勤務時間を短縮した。
夫が転職した。
会社の業績が悪化した。
となれば、ボーナスの状況は変わります。
住宅ローンだけは昔の契約が残る
ここがポイントです。
生活は変わります。
給料も変わります。
働く会社も変わります。
家族構成も変わります。
しかし住宅ローンは、
契約した当時の返済計画が長く続く
契約です。
だから、
「今払えるか」より「将来も払えるか」
を見る必要があります。
ボーナス払いを使うと総返済額も増えるの?
条件によっては、毎月返済だけの場合と比べて総返済額が増えることがあります。
ボーナス返済分は返済間隔が長くなる
毎月返済なら、毎月少しずつ元金を減らしていきます。
一方、ボーナス返済部分は、6か月ごとなどに返済します。
そのため、返済のタイミングの違いによって利息総額に差が出る場合があります。
三菱UFJ銀行も、ボーナス払いでは総返済額が増える可能性がある点をデメリットとして挙げています。 (参考情報:三菱UFJ銀行)
「月々が安い=住宅ローンがお得」ではない
ここでも、月々の返済額だけを見ないことが重要です。
確認したいのは、
借入額
金利
返済期間
毎月返済額
ボーナス返済額
総返済額
です。
月々7万円という数字だけでは、住宅ローン全体の負担は判断できません。
ボーナス払いと繰上返済は何が違う?
ここはかなり大事です。
一見、どちらもボーナスから住宅ローンを多く返しているように見えます。
しかし仕組みは違います。
ボーナス払いは最初から返済義務に入っている
住宅ローンを契約するとき、
「ボーナス月に20万円追加」
と設定します。
すると、その20万円は、
返済予定として決まっているお金
です。
ボーナスが多くても少なくても、原則として契約に従って支払います。
繰上返済は余裕があるときに追加で返す
一方、毎月返済だけで住宅ローンを組み、ボーナスが50万円出た。
今年は家計にも余裕がある。
だから20万円繰上返済する。
これは、
その時点で判断できます。
今年は教育費がかかるからしない。
来年は余裕があるからする。
という選択もできます。
家計の自由度で考えると違いが分かりやすい
たとえば毎年冬に50万円ボーナスが出る家庭を考えます。
ボーナス払いの場合
冬のボーナス50万円
↓
住宅ローン20万円
最初から予約済み
↓
残り30万円
となります。
毎月払い+任意の繰上返済の場合
冬のボーナス50万円
↓
今年は車検がある
↓
繰上返済しない
という判断ができます。
翌年は、
ボーナス50万円
↓
大きな出費なし
↓
20万円繰上返済
とできます。
つまり、
家計に合わせて判断できる余地が大きい
のが違いです。
ではボーナス払いは絶対使わない方がいい?
ここは、
絶対ダメ
と断定するものではありません。
安定したボーナスがある人にはメリットもある
ボーナス払いを使えば、毎月の返済額を抑えられます。
また、ボーナスが安定して支給される職場であれば、
収入の多い時期に返済を多くする
という家計管理もできます。
三菱UFJ銀行も、毎月の返済額を抑えられることや、安定したボーナスがある場合に収入のタイミングに合わせて返済できることをメリットとして挙げています。 (参考情報:三菱UFJ銀行)
危ないのは「ボーナスがないと返せない」状態
判断するポイントはここです。
ボーナス払いがあること自体より、
ボーナスが1回なくなっただけで住宅ローンが払えなくなる
返済計画になっていないか。
ここを見る方が重要です。
ボーナス払いを使うなら何を確認する?
使う場合でも、いくつか確認しておきたいポイントがあります。
ボーナスが減っても払える金額にする
たとえば、毎回50万円のボーナスが出るから、40万円を住宅ローンへ。
これはかなり余裕が小さい返済計画です。
一方、ボーナス返済10万円なら、仮にボーナスが減っても、
毎月の貯蓄などから対応できる可能性があります。
つまり、
満額ボーナスを前提にしない
ことです。
生活イベントと重ならないかを見る
ボーナスは住宅ローン以外にも使います。
- 固定資産税
- 車検
- 自動車税
- 旅行
- 帰省
- 教育費
- 家電買い替え
- 家の修繕
などです。
「ボーナス50万円あるから余裕」
と思っていても、実際には住宅ローン以外の支出もあります。
子どもが大きくなる時期とボーナス返済が重なることもある
住宅ローンは長期なので、返済開始直後だけでなく、
10年後、20年後
を考える必要があります。
教育費が増える時期が来る
家を買ったとき、子どもが3歳だったとします。
15年後には18歳です。
大学進学などで家計負担が増える可能性があります。
しかし、住宅ローンのボーナス払いはそのまま続きます。
「若いころは余裕だった20万円」が、将来も同じ重さとは限りません。
住宅そのものにもお金がかかる
10年、15年と住めば、
- 給湯器
- エアコン
- 外壁
- 屋根
- 水回り
などの修繕・交換が必要になることがあります。
つまり、
住宅ローン返済以外にも家のお金が増えていく
ことを考えておく必要があります。
ボーナス払いをやめることはできる?
これは住宅ローン商品によります。
返済方法を変更できる場合もある
住宅金融支援機構のフラット35では、返済中のボーナス返済部分を変更したり、ボーナス返済を取りやめたりする手続きが案内されています。 (参考情報:フラット35)
たとえば公式の変更例では、ボーナス返済をゼロにする代わりに、
毎月の返済額を増やす
ケースが示されています。 (フラット35)
ボーナス払いをなくせば借金が減るわけではない
ここも注意です。
ボーナス返済をやめたからといって、その分の住宅ローンが消えるわけではありません。
簡単にいうと、今まで、毎月7万円+ボーナス返済だったものを、毎月9万円などへ組み替えるイメージです。
だから、
ボーナス返済をやめれば毎月の負担が増える可能性
があります。
ボーナスが急になくなったらどうする?
もし実際に返済が難しくなりそうなら、放置しないことが重要です。
延滞する前に金融機関へ確認する
ボーナス月の返済が、
「来月ちょっと厳しい」
と分かった段階で、住宅ローンを借りている金融機関へ相談します。
金融機関や住宅ローン商品によっては、返済方法変更などの選択肢が用意されている場合があります。
フラット35にも、毎月・ボーナス返済額の内訳変更や、ボーナス返済取り止めの仕組みがあります。 (参考情報:フラット35)
「1回くらい払わなくても大丈夫」と考えない
住宅ローンは契約上の返済です。
ボーナスが出なかったことと、住宅ローンの返済義務は別です。
返済できない状態をそのままにすると、延滞が続き、さらに状況が悪化する可能性があります。
住宅ローンの返済ができなくなった後に出てくる言葉のひとつが、
代位弁済
です。
→ 代位弁済とは?保証会社が払ったら住宅ローンはなくなる?仕組みをわかりやすく解説
昔の住宅ローンではボーナス払いが大きいケースもあった
以前の記事で紹介したように、1990年前後には住宅ローン金利が7%台だった時期もありました。
→ 住宅ローン金利7.5%は昔は普通だった?3100万円借りた場合を今と比べて解説
金利が高ければ、毎月の返済額も大きくなります。
そのため、
毎月の返済を抑えて、ボーナスで大きく返す
返済計画が組まれることもありました。
ただし、ボーナスを大きく当てにする返済は、勤務先や収入環境が変わったときに負担が急に表面化します。
「月8万円なら家賃と同じ」で判断しない
住宅広告などを見ると、
「月々○万円台から」
という数字が目につくことがあります。
ここでは条件をよく見る必要があります。
ボーナス払い込みの可能性を確認する
月々7万円でも、年2回20万円のボーナス払いがあれば、年間の住宅ローン返済額は、
7万円×12か月
=84万円
20万円×2回
=40万円
合計、124万円です。
月平均にすれば、約10万3000円です。
つまり、「月7万円の家」ではありません。
住宅ローンは年間で見る
比較するなら、月々返済だけでなく、
年間返済額
を見ると分かりやすくなります。
さらに、
固定資産税
マンションなら管理費・修繕積立金
戸建てなら将来の修繕費
などもあります。
家賃との比較は、「月々返済額だけ」ではできません。
30秒でわかる|ボーナス払いはなぜ危ない?
最後に簡単に整理します。
住宅ローン3000万円
↓
一部をボーナス払いにする
↓
毎月の返済額が小さく見える
↓
しかし借金が減ったわけではない
↓
ボーナス月には大きな返済が必要
↓
10年後、会社の業績が悪化
↓
ボーナス減額
↓
住宅ローンのボーナス返済額は残る
これが最大のリスクです。
つまり、
ボーナス払いそのものが危険なのではなく、将来のボーナスが出ることを前提にしすぎることが危険
なのです。
まとめ|「ボーナスがなくても払えるか」で考える
住宅ローンのボーナス払いには、
毎月の返済額を抑えられる
というメリットがあります。 (参考情報:三菱UFJ銀行)
しかし、ボーナスは30年、35年先まで保証された収入ではありません。
減額されることもあれば、転職などでなくなることもあります。
一方、住宅ローンの返済は契約どおり続きます。
そのためボーナス払いを検討するときは、
「今ボーナスがいくらあるか」
だけでなく、
「ボーナスが減っても払えるか」
を見ることが重要です。
また、毎月返済だけにしておき、余裕のある年に繰上返済するという考え方もあります。
どちらが正解というより、
将来の家計変化にどれだけ対応できる返済計画なのか
が大切です。
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参考資料
- 住宅金融支援機構「借入希望金額から返済額を計算」
- 住宅金融支援機構「返済方法の変更例」
- 三菱UFJ銀行「住宅ローンのボーナス払いはおトク?メリット・デメリット」
