夫婦で住宅ローンを組もうとすると、
「連帯債務」
「ペアローン」
という言葉が出てきます。
どちらも夫婦2人の収入を使って住宅を購入しやすくする方法なので、
「結局、同じじゃないの?」
と思う人も多いでしょう。
しかし、この2つには大きな違いがあります。
一番簡単にいうと、
連帯債務
→1本の住宅ローンを2人で返す
ペアローン
→夫婦がそれぞれ1本ずつ住宅ローンを借りる
という違いです。
つまり、
ローンが1本なのか2本なのか
が大きなポイントです。
この記事では、
- 連帯債務とペアローンの違い
- 夫婦で3000万円借りる場合のイメージ
- 住宅ローン控除はどう違うのか
- 団信はどうなるのか
- 手数料はどちらが多いのか
- どちらかが退職したらどうなるのか
- 離婚した場合はどうなるのか
まで、夫婦の家計に例えながらわかりやすく解説します。
※住宅ローンの商品内容は金融機関によって異なります。連帯債務型、収入合算型、ペアローンの条件や団信の保障内容については、利用する金融機関の商品説明を確認してください。
- まず結論|連帯債務は1本、ペアローンは2本
- 夫婦で3000万円借りるとどう違う?
- スーパーの買い物に例えると分かりやすい
- 収入合算と連帯債務は同じ?
- 住宅ローン控除はどう違う?
- 「2人とも控除できるならペアローンが得」とは限らない
- 団信はどう違う?
- 夫が亡くなったらペアローンは全部なくなる?
- 手数料はどちらが多い?
- ペアローンはなぜ借入額を増やしやすい?
- どちらかが仕事を辞めたらどうなる?
- 離婚すると連帯債務とペアローンはどうなる?
- ペアローンなら持分も別々になる?
- 連帯債務とペアローンはどちらが向いている?
- どちらを選ぶ場合も「最大まで借りる」は慎重に
- 30秒でわかる|連帯債務とペアローンの違い
- まとめ|「ローンが何本あるか」で考えると分かりやすい
まず結論|連帯債務は1本、ペアローンは2本
最初に一番大きな違いを整理します。
連帯債務は「2人で1本のローン」
連帯債務では、
1つの住宅ローンについて、2人が返済義務を負います。
たとえば、
夫
→主たる債務者
妻
→連帯債務者
という形です。
住宅ローン自体は基本的に1本です。
夫婦2人で、
「この3000万円を返します」
と約束しているようなイメージです。
ペアローンは「1人1本ずつ借りる」
一方のペアローンでは、
夫
→2000万円の住宅ローン
妻
→1000万円の住宅ローン
というように、
夫婦それぞれが自分の住宅ローンを契約します。
住宅金融支援機構のフラット35でも、ペアローンは2人それぞれが融資を受ける仕組みになっています。
つまり、
連帯債務
→1本を2人で背負う
ペアローン
→2人がそれぞれ1本ずつ背負う
と考えると分かりやすいでしょう。
夫婦で3000万円借りるとどう違う?
数字を使うとさらに分かりやすくなります。
夫婦で3000万円の住宅ローンを利用するとします。
連帯債務なら3000万円のローンが1本
連帯債務の場合、
住宅ローン
3000万円×1本
です。
夫が主たる債務者。
妻が連帯債務者。
という形になれば、
夫婦とも3000万円のローンについて返済責任を負います。
ただし、
「夫が1500万円、妻が1500万円だけ銀行に対して責任を負う」
という単純な意味ではありません。
連帯債務では、それぞれが債務全体について責任を負う関係になります。
ペアローンなら2本に分かれる
ペアローンなら、
夫
2000万円
妻
1000万円
など、
住宅ローンそのものが2本
になります。
夫は自分の2000万円を返す。
妻は自分の1000万円を返す。
という形です。
そのため、
契約
審査
返済
団信
なども、それぞれのローンについて行われます。
スーパーの買い物に例えると分かりやすい
住宅ローンだと難しいので、買い物に例えてみましょう。
連帯債務は「1枚の大きな伝票を2人で払う」
夫婦で30万円の家具を買ったとします。
会計は、
30万円の伝票1枚
です。
ただし、
夫も妻も、
「この30万円を支払います」
という立場です。
これが連帯債務のイメージです。
ペアローンは「伝票を2枚に分ける」
今度は、
夫
20万円分
妻
10万円分
と別々に購入したとします。
伝票は、
20万円
10万円
の2枚です。
これがペアローンに近いイメージです。
家は1軒でも、
借金の契約は別々
になります。
収入合算と連帯債務は同じ?
ここもかなり混乱しやすいところです。
「夫婦の収入を合わせて住宅ローンを借りる」
ことを、
収入合算
と呼ぶことがあります。
ただし、
収入合算=必ず連帯債務
ではありません。
フラット35では収入合算者が連帯債務者になる
フラット35の収入合算では、収入を合算する人が連帯債務者になることが利用条件として示されています。
たとえば、
夫の年収500万円
妻の年収300万円
を合わせて審査する。
そして妻が連帯債務者になる。
という仕組みです。
金融機関によっては連帯保証型もある
一方、すべての金融機関が同じ仕組みではありません。
りそな銀行では、収入合算方式について、収入合算者を連帯保証人とする仕組みが案内されています。
つまり、
収入合算という名前だけでは、連帯債務なのか連帯保証なのか判断できません。
住宅ローン商品ごとに確認する必要があります。
連帯債務者と連帯保証人の違いについてはこちらで詳しく解説しています。
→ 連帯債務者と連帯保証人の違い|住宅ローンではどっちが重い?夫婦の例でわかりやすく解説
住宅ローン控除はどう違う?
夫婦で住宅ローンを組む場合、かなり重要なのが、
住宅ローン控除
です。
連帯債務では夫婦双方が対象になる場合がある
連帯債務の場合、条件を満たせば、
夫婦それぞれが住宅ローン控除の対象になることがあります。
ただし、
3000万円借りたから、
夫1500万円
妻1500万円
と自動的に半分ずつ控除対象になるわけではありません。
国税庁は、連帯債務について、
夫婦の内部的な債務負担割合や住宅の持分などによって、それぞれの控除対象となる借入金額が変わる
と説明しています。
つまり、
誰がどれくらい負担しているのか。
住宅を何%ずつ所有しているのか。
が重要です。
ペアローンはそれぞれ自分のローンで控除を検討する
ペアローンでは、
夫にも自分の住宅ローン。
妻にも自分の住宅ローン。
があります。
そのため、それぞれが要件を満たせば、
それぞれの住宅ローンについて住宅ローン控除を検討できます。
りそな銀行も、ペアローンでは夫婦それぞれが契約者となり、住宅ローン控除がそれぞれに適用されると案内しています。
「2人とも控除できるならペアローンが得」とは限らない
ここで、
「じゃあペアローンが一番得じゃん」
と思うかもしれません。
しかし単純には決まりません。
控除だけで決めると危ない
住宅ローンは何十年も続く契約です。
住宅ローン控除だけでなく、
- 手数料
- 団信
- 金利
- 返済期間
- 将来の収入
- 退職
- 育児
- 病気
- 離婚
なども考える必要があります。
目先の税負担だけで決めると、
将来の返済リスクを見落とす可能性
があります。
住宅の持分にも注意する
夫婦で住宅を購入する場合、
住宅の所有持分
も重要です。
誰がどれだけ資金を出したか。
誰がどれだけローンを負担するか。
誰が住宅を何%所有するか。
これらが大きくずれると、税務上の扱いなどに注意が必要になる場合があります。
連帯債務の場合については、国税庁も持分と債務負担の具体的な計算例を公開しています。
団信はどう違う?
住宅ローンでは、
団体信用生命保険(団信)
も非常に重要です。
団信は、契約者が死亡した場合など一定の条件を満たしたとき、住宅ローン残高の返済に保険金が使われる仕組みです。
連帯債務は「2人とも自動的に全部消える」とは限らない
連帯債務では、
夫が死亡した場合。
妻が死亡した場合。
それぞれ住宅ローンがどうなるのかは、加入する団信によって異なります。
フラット35には、連帯債務の夫婦を対象にした「デュエット(ペア連生団信)」などの仕組みもあります。
つまり、
連帯債務だから必ず2人とも同じ保障
とは限りません。
契約時の団信内容を確認する必要があります。
ペアローンは基本的にそれぞれ団信に加入する
ペアローンでは住宅ローンが2本あります。
そのため基本的には、
夫
→夫の住宅ローンに団信
妻
→妻の住宅ローンに団信
という形になります。
りそな銀行も、ペアローンではそれぞれが団信へ加入する仕組みを案内しています。
夫が亡くなったらペアローンは全部なくなる?
これは大事なポイントです。
通常は夫のローンだけが対象になる
仮に、
夫
2000万円
妻
1000万円
のペアローンだったとします。
夫が団信の保障対象となる状態になった場合、
通常は、
夫の2000万円のローン
について団信が適用されます。
一方、
妻の1000万円まで自動的に消えるとは限りません。
妻自身のローンだからです。
商品によってはペアローン向けの連生団信などもあるため、保障内容は商品ごとに確認する必要があります。
連帯債務も商品によって結果が違う
連帯債務でも同じです。
誰が団信に加入しているのか。
夫婦連生型なのか。
保障割合はどうなっているのか。
によって結果が異なります。
だから、
「連帯債務だから安心」
「ペアローンだから安心」
ではなく、
団信の中身を見る
ことが重要です。
手数料はどちらが多い?
これも現実的な違いです。
連帯債務はローンが基本的に1本
連帯債務では住宅ローンが基本的に1本なので、
契約も1本です。
そのため、
契約に伴う費用についても、
1本分を基本に考える商品
があります。
ペアローンは2本なので費用も2本分になりやすい
ペアローンは、
夫のローン
妻のローン
という2契約です。
そのため、
融資手数料
登記関係費用
契約に伴う諸費用
などが、それぞれ発生するケースがあります。
りそな銀行もペアローンについて、ローンが2本になるため、手数料も両方のローンに対して発生すると説明しています。
つまり、
借入可能額だけでなく、契約コストも比較する
必要があります。
ペアローンはなぜ借入額を増やしやすい?
ペアローンが使われる大きな理由のひとつが、
夫婦それぞれの収入を使えること
です。
夫だけでは足りない借入額を補える
たとえば、
夫だけの年収では3000万円までしか借りられない。
しかし欲しい住宅は4500万円。
という場合、
妻も住宅ローンを借りることで、
夫3000万円
妻1500万円
のように借入額を増やせることがあります。
もちろん実際の借入可能額は審査によります。
借りられる額と返せる額は別
ここは非常に重要です。
夫婦2人の収入を使えば、
1人より大きな金額を借りられる
可能性があります。
しかし、
借りられる=無理なく返せる
ではありません。
今は共働きでも、
- 出産
- 育児休業
- 転職
- 病気
- 介護
- 退職
などで、どちらかの収入が減る可能性があります。
住宅ローンは数十年続くので、
現在の世帯年収だけで考えない
ことが重要です。
どちらかが仕事を辞めたらどうなる?
共働きを前提に住宅ローンを組む場合には、ここも考えておきたいところです。
連帯債務でも返済義務は残る
妻が連帯債務者だったとします。
その後、
出産や介護などで仕事を辞めました。
収入がなくなったとしても、
連帯債務者という契約上の立場が自動的になくなるわけではありません。
金融機関との住宅ローン契約は続きます。
ペアローンなら妻自身のローンも残る
ペアローンの場合はさらに分かりやすいです。
妻が1000万円借りているなら、
仕事を辞めても、
妻名義の住宅ローンそのものは残ります。
収入がなくなったからといって、返済義務が消えるわけではありません。
そのため共働き住宅ローンでは、
どちらか一人の収入が減っても返済できるか
を考えることが重要です。
離婚すると連帯債務とペアローンはどうなる?
夫婦でローンを組む場合、無視できないのが離婚です。
住宅ローンは離婚届と一緒に消えてくれるわけではありません。
連帯債務は離婚しても残る
夫婦が離婚しても、
金融機関との連帯債務契約が自動的になくなるわけではありません。
たとえば、
夫が家に残る。
妻が家を出る。
となっても、妻が連帯債務者のままなら、
住宅ローンに対する責任が残る可能性があります。
国税庁にも、離婚後に連帯債務による住宅ローンを借り換えた場合の住宅ローン控除に関する事例があります。
ペアローンなら2本のローンを整理する必要がある
ペアローンでは、
夫のローン
妻のローン
が別々に存在します。
そのため離婚すると、
「家を誰が持つのか」
だけでなく、
2本の住宅ローンをどう整理するのか
という問題が発生します。
一方だけが家に住み続ける場合でも、金融機関との契約変更や借り換えなどが必要になることがあります。
勝手に、
「離婚したから妻のローンを夫が引き継ぐ」
ということはできません。
ペアローンなら持分も別々になる?
ペアローンでは、1つの住宅を夫婦で購入するため、
共有名義になるケースが一般的
です。
借入額に応じて持分を決めるケースがある
たとえば4500万円の住宅について、
夫が3000万円負担。
妻が1500万円負担。
なら、
夫3分の2
妻3分の1
など、実際の資金負担を踏まえて持分を設定することがあります。
りそな銀行もペアローンについて、1つの物件に対して夫婦等がそれぞれ契約し、物件は共有名義となる仕組みを案内しています。
持分は適当に半分にしない方がいい
「夫婦だから50%ずつでいいよね」
と単純に決めるのではなく、
誰が頭金を出したのか。
誰がいくら借りたのか。
実際に誰がどれだけ住宅取得費を負担したのか。
を考える必要があります。
この部分は税務にも関係する可能性があるため、契約時に確認しておくことが大切です。
連帯債務とペアローンはどちらが向いている?
結局、
「どっちがいいの?」
という疑問になりますよね。
一律に決めることはできません。
連帯債務が合いやすいケース
たとえば、
- 住宅ローンを1本にまとめたい
- 夫婦の収入を合算したい
- 契約をできるだけシンプルにしたい
- 利用したい商品に連帯債務型がある
という場合は、連帯債務を検討することになります。
フラット35の収入合算もこの形です。
ペアローンが合いやすいケース
一方、
- 夫婦それぞれが安定した収入を持っている
- それぞれ住宅ローン控除を検討したい
- それぞれ団信に加入したい
- それぞれ別の返済期間などを設定したい
という場合には、ペアローンが候補になります。
ただしローンが2本になるため、
諸費用や管理の手間が増える
点も考える必要があります。
どちらを選ぶ場合も「最大まで借りる」は慎重に
連帯債務でもペアローンでも、
夫婦2人の収入を使うと借入可能額が増えやすくなります。
ここが最大のメリットであり、同時に最大の注意点でもあります。
2人分の収入がずっと続くとは限らない
住宅ローンは、
30年
35年
場合によってはそれ以上
続きます。
今の夫婦の働き方が30年後まで同じとは限りません。
だから、
現在借りられる最大額
ではなく、
将来どちらかの収入が減っても返せる額
を見ることが大切です。
家の価格より「毎月の生活が残るか」を見る
住宅ローンを払ったあと、
食費
教育費
車
保険
旅行
老後資金
など、生活にはほかにもお金が必要です。
住宅ローンのためだけに働くような家計になれば、
家を買えたとしても生活に余裕がなくなります。
夫婦ローンでは、
借入可能額が増えることを「余裕が増えた」と勘違いしない
ことが重要です。
30秒でわかる|連帯債務とペアローンの違い
最後に一気に整理します。
連帯債務
家は1軒
↓
住宅ローンも1本
↓
夫
主たる債務者
妻
連帯債務者
↓
2人で1本のローンを返す
ペアローン
家は1軒
↓
住宅ローンは2本
↓
夫
自分のローン
妻
自分のローン
↓
2人がそれぞれ自分のローンを返す
つまり、
連帯債務
=1本を2人で背負う
ペアローン
=2本をそれぞれ背負う
これが最も大きな違いです。
まとめ|「ローンが何本あるか」で考えると分かりやすい
連帯債務とペアローンは、どちらも夫婦の収入を活用して住宅を購入するときに使われる方法です。
しかし仕組みは違います。
連帯債務
→住宅ローンは基本的に1本
→2人ともその債務について責任を負う
ペアローン
→住宅ローンは2本
→夫婦それぞれが自分のローンを借りる
という違いがあります。
また、
- 住宅ローン控除
- 団信
- 手数料
- 住宅の持分
- 退職時の返済
- 離婚時の整理
についても違いが出ます。
そのため、
「どっちの方がたくさん借りられるか」
だけで選ばないことが重要です。
夫婦のどちらかの収入が減った場合。
どちらかが死亡した場合。
離婚した場合。
まで考えたうえで、
長期間無理なく返済できる形
を選ぶ必要があります。
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参考資料
- 住宅金融支援機構「フラット35 ペアローン」
- 住宅金融支援機構「フラット35 収入合算」
- 国税庁「共有の家屋を連帯債務により取得した場合の借入金の額の計算」
- りそな銀行「住宅ローンのペアローンとは?収入合算との違い」

