クレジットカード決済代行会社の全東信をめぐり、
「20年前から粉飾決算が続いていた可能性がある」
と報じられています。
さらに、帳簿上は純資産がプラスだった一方で、粉飾を是正すると実質的には約605億円の債務超過だった可能性もあるとされています。
ここで気になるのが、粉飾決算の中身です。
「預金水増しってどういうこと?」
「架空債権って何?」
「営業権の過大計上とは?」
「未払金を載せないと何が起きるの?」
こうした言葉は難しく見えますが、要するに、会社の財務状態を実際よりよく見せる操作です。
この記事では、全東信で報じられている粉飾決算の主な中身を、できるだけわかりやすく解説します。
粉飾決算とは何か?
会社の成績表を実際よりよく見せること
粉飾決算とは、会社の決算書を実際よりよく見せることです。
会社の決算書には、売上、利益、資産、負債、純資産などが書かれています。
銀行や取引先は、その決算書を見て、
「この会社にお金を貸して大丈夫か」
「取引しても問題ないか」
「支払い能力はあるか」
を判断します。
その決算書が実態よりよく見せられていたら、外部の人は本当の危険度を見誤る可能性があります。
粉飾は「資産を多く見せる」「負債を少なく見せる」が基本
粉飾決算にはいろいろな方法がありますが、大きく分けると次の2つです。
資産を実際より多く見せる。
負債を実際より少なく見せる。
資産が多く、負債が少なく見えれば、会社は健全に見えます。
逆に、実際には資産が少なく、負債が多ければ、会社は危ない状態です。
今回の全東信で報じられている内容も、かなり単純化すると、
あるはずのない資産をあるように見せた。
払うべきお金を十分に負債として見せていなかった。
という話です。
全東信で報じられている粉飾の中身
預金残高の水増し
まず報じられているのが、預金残高の水増しです。
預金残高とは、会社の銀行口座にあるお金のことです。
預金は、もっとも分かりやすい資産の一つです。
会社にたくさん預金があるように見えれば、
「この会社は資金に余裕がある」
「支払い能力がある」
「銀行に返済できそう」
と見られやすくなります。
しかし、もし実際には存在しない預金を帳簿上だけ増やしていたとすれば、会社の財務状態はかなりよく見えてしまいます。
たとえば、本当は10億円しかないのに、帳簿上は100億円あるように見せれば、外からは90億円分も資産が多く見えることになります。
架空債権の計上
次に、架空債権です。
債権とは、簡単にいうと「あとでお金を受け取る権利」です。
たとえば、取引先に商品やサービスを提供し、まだ代金を受け取っていない場合、その代金は売掛金などの債権になります。
しかし、架空債権とは、実際には存在しない、または回収できる見込みがない債権を、あるように見せることです。
これをすると、会社の資産が増えて見えます。
「将来これだけのお金が入ってくる予定です」と見せることができるからです。
でも、実際にそのお金が入ってこないなら、それは資産とはいえません。
架空債権は、会社を実際より大きく、健全に見せる典型的な粉飾の一つです。
営業権の過大計上とは?
営業権は「会社の見えにくい価値」
営業権とは、かなり簡単にいうと、会社が持つ見えにくい価値です。
たとえば、ブランド力、顧客基盤、営業網、ノウハウ、取引先との関係などです。
会社を買収したときなどに、帳簿上の資産より高い金額で買うことがあります。
その差額の一部が営業権として計上されることがあります。
営業権そのものが悪いわけではありません。
実際に価値のある事業や顧客基盤があれば、営業権として意味を持つ場合があります。
価値がないのに高く見せると資産が増えて見える
問題は、実質的に価値がない営業権を、大きな資産として残し続けることです。
本当は価値が下がっているのに、帳簿上は価値があるように見せていれば、会社の資産が多く見えます。
今回の全東信では、実質的に無価値な営業権の過大計上も報じられています。
これも、会社の財務状態を実際よりよく見せる要因になります。
つまり、
「本当は価値がないものを、価値がある資産として載せていた」
というイメージです。
未払立替精算金の未計上とは?
払わなければいけないお金を負債に載せないこと
未払立替精算金の未計上は、少し難しく聞こえます。
ただ、考え方はシンプルです。
未払金とは、まだ支払っていないけれど、将来払わなければいけないお金です。
会社にとっては負債です。
負債としてきちんと載せなければ、会社の借金や支払い義務が少なく見えてしまいます。
全東信は、加盟店のカード売上を早期に入金するようなサービスを行っていました。
そのため、加盟店に対して支払うべき精算金が発生していた可能性があります。
もし本来負債として載せるべき未払立替精算金を載せていなかったなら、会社の負債は実際より少なく見えます。
負債を少なく見せると純資産が増えて見える
会社の財務は、ざっくりいうと、
資産 − 負債 = 純資産
で見ます。
負債を少なく見せると、純資産は多く見えます。
つまり、会社の体力があるように見えてしまいます。
今回、帳簿上は純資産がプラスだったのに、粉飾を是正すると大幅な債務超過だった可能性があると報じられているのは、このためです。
資産を多く見せる。
負債を少なく見せる。
この両方が重なると、実態との差は非常に大きくなります。
なぜ粉飾で債務超過が隠れるのか?
債務超過は「資産より負債が多い状態」
債務超過とは、会社の資産より負債の方が多い状態です。
たとえば、資産が100億円、負債が150億円なら、差し引き50億円の債務超過です。
この状態では、会社が持っている資産をすべて使っても、借金や支払い義務を返しきれません。
銀行や取引先から見ると、かなり危険な状態です。
資産を増やし、負債を減らせば「健全」に見える
粉飾によって、資産を実際より増やし、負債を実際より減らすと、債務超過が隠れます。
たとえば、本当は600億円の債務超過でも、存在しない資産を数百億円分上乗せし、負債を数百億円分載せていなければ、帳簿上は純資産がプラスに見えることがあります。
これが粉飾決算の怖さです。
数字だけを見ると、会社はまだ大丈夫に見えます。
しかし、実際にはかなり前から財務が傷んでいる可能性があります。
なぜ見抜くのが難しいのか?
外部から確認できる情報には限界がある
一般の飲食店や利用者が、全東信の粉飾を見抜くのはほぼ不可能です。
なぜなら、決済代行会社の内部財務を詳しく確認する手段が限られているからです。
飲食店から見れば、
端末が使える。
入金が続いている。
営業担当者がいる。
長年取引している。
他の店舗も使っている。
こうした状態なら、普通は安心してしまいます。
しかし、入金が続いていることと、会社の財務が健全であることは同じではありません。
銀行でも難しい場合がある
銀行は、融資先の決算書や資金繰り、担保、取引実績を見て審査します。
しかし、もし決算書そのものが長年歪められていた場合、銀行でもリスクを正確に把握するのは難しくなります。
もちろん、銀行側にも与信管理の責任はあります。
ただ、粉飾が巧妙で、長期間にわたっていた場合、外部から見抜くのは簡単ではありません。
今回、全東信への融資焦げ付きが地銀に波及しているのも、決済代行会社の信用力を見極める難しさを示しています。
なぜ決済代行会社の粉飾は怖いのか?
お金の通り道にいる会社だから
全東信のような決済代行会社は、お金の通り道にいる会社です。
利用者がカードで払う。
カード会社や決済代行会社を通る。
加盟店に売上が入る。
この流れの中で、決済代行会社が重要な役割を持ちます。
特に早期入金サービスでは、加盟店に先にお金を渡すため、決済代行会社自身に大きな資金力と信用力が必要です。
その会社の財務が実際には大きく傷んでいたとすれば、加盟店への入金が止まるリスクが高くなります。
加盟店も銀行も巻き込まれる
決済代行会社が破産すると、影響は広がります。
加盟店には、カード売上が入らない可能性があります。
銀行には、融資が返ってこない可能性があります。
取引先には、未払いが発生する可能性があります。
つまり、粉飾によって問題が長く見えにくくなるほど、関係者が増え、損失も大きくなりやすいのです。
今回の全東信の問題は、単なる会計不正ではなく、飲食店や地銀にも影響する信用問題です。
粉飾が金融機関にも影響した可能性
粉飾決算が問題になるのは、単に会社の数字をよく見せるだけではありません。
銀行や信用組合、ノンバンクなどの金融機関は、融資先の決算書や資金繰りを見て「貸して大丈夫か」を判断します。
全東信の申立書では、金融債権者が63社、貸付総額が1130億円とされています。

もし財務状態が長年実態より良く見えていたなら、金融機関は本当のリスクを把握しにくかった可能性があります。
つまり、粉飾は会社内部だけの問題ではなく、加盟店への未入金、金融機関の融資焦げ付き、預金者の不安へと広がる問題だったといえます。
利用者は何に気をつければいい?
普通のカード払いを怖がりすぎる必要はない
一般利用者が普通に飲食店で食事をして、その場でカード払いしただけなら、直接的なリスクは大きくありません。
利用者はサービスを受け取り、カードで支払いを済ませています。
その後、店に売上金が入らなかったとしても、それは主に加盟店と決済代行会社の間の問題です。
そのため、普通の外食や買い物で、利用者が過度に心配する必要はありません。
注意すべきは高額前払い
ただし、利用者にも関係する場面があります。
それは、まだ受け取っていないサービスに対して先にお金を払うケースです。
エステの回数券。
学習塾や予備校の前払い。
美容医療のコース契約。
旅行やイベントの予約金。
飲食店の貸切予約金。
こうした高額前払いでは、事業者や関係会社が倒れたときに、返金が難しくなる可能性があります。
今回のニュースから利用者が学ぶべきなのは、普通のカード払いを怖がることではありません。
お金の流れは見えにくい。だから、高額前払いは慎重にする。
この感覚です。
まとめ
全東信をめぐっては、20年前から粉飾決算が続いていた可能性や、実質的に約605億円の債務超過だった可能性が報じられています。
粉飾決算とは、会社の財務状態を実際よりよく見せることです。
今回報じられている主な中身は、預金残高の水増し、架空債権、営業権の過大計上、未払立替精算金の未計上などです。
かなり簡単にいうと、
ない資産をあるように見せる。
回収できないお金を回収できるように見せる。
払うべきお金を負債として十分に載せない。
こうした操作によって、会社は実際より健全に見えます。
しかし、実態としては大きな債務超過だった可能性があります。
全東信の問題が深刻なのは、その会社が単なる一般企業ではなく、飲食店などのカード売上の早期入金を担う決済代行会社だったことです。
お金の流れの真ん中にいる会社の信用が崩れると、加盟店、銀行、取引先に影響が広がります。
一般利用者が普通のカード払いを過度に怖がる必要はありません。
ただし、今回のニュースは、高額前払いや回数券、予約金などを考えるうえで大事な教訓になります。
見えている数字が、必ずしも実態とは限らない。
便利な支払いの裏側にも、信用リスクがある。
だからこそ、利用者は高額前払いをしすぎない。
これが、全東信の粉飾決算疑惑から見えてくるポイントです。

