大雨のニュースを見ていると、川が氾濫していないのに道路や住宅地が水浸しになっていることがあります。
「近くに大きな川なんてないのに、どうして浸水するの?」
そんな疑問の答えの一つが、内水氾濫(ないすいはんらん)です。
内水氾濫は、簡単にいえば、
街に降った雨を下水道や側溝などで排水しきれなくなり、水が地上へあふれる現象
です。
川の堤防が壊れなくても起こります。
さらに大雨で川の水位が高くなると、街の水を川へ排出できなくなり、浸水が起きる場合もあります。
そのため、
- 川から離れた住宅地
- 駅前
- 地下街
- アンダーパス
- 低い土地
でも被害が発生する可能性があります。
この記事では、内水氾濫とは何なのか、川が決壊していないのになぜ街が水没するのか、外水氾濫との違い、都市部で起きやすい理由、マンホールやアンダーパスが危険になる仕組みまで解説します。
- 内水氾濫とは?
- なぜ川が決壊していないのに街が水没する?
- 内水氾濫と外水氾濫の違いは?
- 都市部ではなぜ内水氾濫が起きやすい?
- 大雨で川の水位が上がると内水氾濫することもある
- マンホールから水が噴き出すのはなぜ?
- アンダーパスはなぜ大雨で水没しやすい?
- 地下街や地下鉄はなぜ注意が必要?
- 川から遠ければ内水氾濫は起きない?
- 内水氾濫はどのくらいの雨で起きる?
- 長時間大雨でも内水氾濫は起きる?
- 2000年東海豪雨でも内水氾濫が発生
- 内水氾濫の危険な場所はどう調べる?
- 大雨の最中は何を確認する?
- 道路が冠水していたら歩いて渡っていい?
- 内水氾濫に備えて準備しておきたいもの
- 内水氾濫についてよくある質問
- まとめ|内水氾濫は「川の水」ではなく「街の雨水が出ていかない」水害
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内水氾濫とは?
国土交通省では、内水氾濫について、大量の雨が降ったときに下水道などで雨水を排除できなかったり、川の水位が上がって雨水を川へ排出できなくなったりすることで発生すると説明しています。
つまり、大きく分けると2つのパターンがあります。
| パターン | 何が起きる? |
|---|---|
| 排水能力を超える | 降った雨を下水道・側溝などで処理しきれず街に水がたまる |
| 川へ排水できない | 川の水位が高くなり、街の雨水を川へ流せなくなる |
どちらの場合も、川の堤防が決壊しなくても住宅地や道路が浸水する可能性があります。
なぜ川が決壊していないのに街が水没する?
通常、街に降った雨はその場にずっと残っているわけではありません。
側溝や雨水ますなどへ入り、下水道や水路を通って排出されます。
下水道にも流せる水の量には限界がある
下水道や排水施設には、一度に処理できる雨水の量に限界があります。
短時間に大量の雨が降ると、街から流れ込む水の量が排水能力を上回ることがあります。
すると、
- 側溝に水が入りきらない
- 道路に水がたまる
- 下水道から水があふれる
といった状態になります。
排水できない水が低い場所へ集まる
あふれた水は地形に沿って低い場所へ流れます。
そのため同じ地域でも、少し低くなっている道路や交差点、地下空間の入口などへ水が集中する場合があります。
これが「川がないのに街が水没した」ように見える理由の一つです。
内水氾濫と外水氾濫の違いは?
水害について調べると、内水氾濫と一緒に外水氾濫という言葉が出てきます。
この2つは水があふれる原因が違います。
| 種類 | 主な原因 | イメージ |
|---|---|---|
| 内水氾濫 | 街の雨水を排水できない | 街側の水があふれる |
| 外水氾濫 | 川の水が堤防を越える・堤防が壊れる | 川から水があふれる |
外水氾濫は川の水が街へ出てくる
河川の水位が上昇し、堤防を越えたり堤防が決壊したりして水が街へ流れ出すのが外水氾濫です。
大きな河川の洪水などで想像するのはこちらでしょう。
内水氾濫は街の水を外へ出せない
一方の内水氾濫は、街に降った雨をうまく排出できない状態です。
そのため、大きな河川から離れた場所でも発生することがあります。
都市部ではなぜ内水氾濫が起きやすい?
内水氾濫は特に都市部で問題になりやすい水害です。
そこには都市特有の土地の使われ方が関係しています。
アスファルトやコンクリートは雨を通しにくい
山や田畑では、降った雨の一部が地面へしみ込みます。
しかし都市部では、
- 道路
- 駐車場
- ビル
- 住宅
などによって地面の多くが覆われています。
雨水が地中へ入りにくいため、その多くが短時間で排水施設へ集中します。
猛烈な雨では排水が追いつかない
通常の雨なら下水道で処理できても、非常に激しい雨が短時間に集中すると処理能力を上回る場合があります。
近年よく聞く、
- 局地的な大雨
- 線状降水帯
- 台風による豪雨
などでは、短時間に大量の水が街へ落ちてきます。
都市の排水施設へ水が一気に集中するため、内水氾濫につながる可能性があります。
▶ 線状降水帯とは?なぜ同じ場所に大雨が降り続く?発生の仕組みと危険性を解説
大雨で川の水位が上がると内水氾濫することもある
「排水能力を超える豪雨」だけが内水氾濫の原因ではありません。
もう一つ重要なのが川の水位です。
街の雨水は最終的に川へ流すことが多い
街に降った雨水は、下水道や水路などを通り、最終的に川などへ排出されます。
ところが大雨で川自体の水位が非常に高くなると、街側から水を出しにくくなることがあります。
出口がふさがれたような状態になる
イメージとしては、排水口の先がすでに水でいっぱいになっているような状態です。
下流へ水が流れにくくなるため、支川や水路、下水道などに水がたまり、周囲へあふれることがあります。
国土交通省では、こうした本川の水位上昇によって排水できなくなるタイプも内水氾濫として説明しています。
マンホールから水が噴き出すのはなぜ?
大雨の映像で、マンホール付近から水が吹き上がっているのを見たことがある人もいるでしょう。
これも内水氾濫と関係する場合があります。
下水道の中が大量の水でいっぱいになる
非常に強い雨が降ると、一気に大量の雨水が下水道へ流れ込みます。
下水管の中で処理できる量を超えると、水位や圧力が高くなります。
その結果、マンホールなどから水が地上へあふれたり、吹き上がったりすることがあります。
大雨時のマンホール周辺には近づかない
道路が冠水すると、マンホールのふたや側溝が見えなくなる場合があります。
水の流れによってふたがずれたり、外れたりする可能性もあります。
冠水した道路を歩くこと自体に危険があるため、状況確認のために近づかないことが重要です。
アンダーパスはなぜ大雨で水没しやすい?
内水氾濫で特に注意したい場所の一つがアンダーパスです。
アンダーパスとは、鉄道や道路の下を通るため周囲より低くなっている道路です。
低い場所なので水が集まりやすい
雨水は高い場所から低い場所へ流れます。
アンダーパスは道路が掘り下げられているため、周辺から雨水が集まりやすい構造です。
排水設備で水を外へ出していますが、猛烈な雨で流入量が排水量を上回ると水深が急激に増える場合があります。
車から見ると水深が分かりにくい
冠水した道路では、水面だけを見ても実際の深さが分かりません。
特に夜間は道路の境界も見えにくくなります。
国土交通省も、内水氾濫では道路や鉄道のアンダーパスで局所的な浸水が発生することがあると説明しています。
冠水しているアンダーパスへ車で進入しないことが重要です。
▶ 車は水深何cmまで走れる?冠水道路が危険な理由と水没したときの脱出方法
地下街や地下鉄はなぜ注意が必要?
都市部では地上だけでなく、地下空間にも注意が必要です。
水は低い地下へ流れ込む
道路へ水があふれると、その水は、
- 地下街の入口
- 地下鉄の出入口
- 地下駐車場
- 地下室
などへ流れ込む可能性があります。
一度流入が始まると、低い地下空間へ大量の水が集中する場合があります。
地上の浸水が浅く見えても油断できない
地上ではそれほど深く見えない水でも、階段を通って地下へ流れ込むと水が集まります。
そのため猛烈な雨の際には、地下にいる人ほど早めに地上や高い場所へ移動する判断が重要になることがあります。
川から遠ければ内水氾濫は起きない?
起きる可能性があります。
ここが外水氾濫との大きな違いです。
排水能力を超えるタイプなら川から離れていても起きる
降った雨そのものを下水道などで処理できないタイプの内水氾濫は、大きな川のすぐそばでなくても発生します。
国土交通省も、河川から離れた場所で発生することがあると説明しています。
低い土地は特に水が集まりやすい
周囲より土地が低い場所では、近くで降った雨だけでなく周囲から流れてきた水も集まります。
そのため、
「川から離れているから水害は関係ない」
とは考えない方がいいでしょう。
内水氾濫はどのくらいの雨で起きる?
「1時間に何mm降ったら内水氾濫するの?」
という疑問もあります。
しかし全国一律に「○mmなら発生する」と決めることはできません。
街によって排水能力が違う
内水氾濫の起きやすさは、
- 下水道の整備状況
- 土地の高さ
- 地形
- 水路
- 雨の降り方
- 河川の水位
などによって変わります。
同じ雨量でも、ある街では問題なく排水でき、別の街では道路冠水することがあります。
短時間に集中する雨は特に危険
同じ100mmの雨でも、24時間かけて降る場合と1~2時間に集中する場合では排水施設への負担が違います。
短時間に激しい雨が降れば、一度に大量の水が下水道へ入るため、内水氾濫が発生しやすくなります。
▶ 1時間50mm・100mmの雨はどれくらい危険?雨量の目安と起きることをわかりやすく解説
長時間大雨でも内水氾濫は起きる?
もちろん起こる可能性があります。
短時間豪雨だけを警戒すればいいわけではありません。
長雨で川の水位が高くなる
長時間雨が続くと、広い流域から川へ水が集まり、河川水位が高くなります。
すると街の水を河川へ排出しにくくなり、内水氾濫の危険が高まることがあります。
短時間豪雨と長雨が重なることもある
台風や前線では、何日も雨が続いているところへさらに激しい雨が降る場合があります。
こうした状況では、地面・下水道・河川のすべてに負担がかかります。
▶ 長時間大雨はなぜ危険?総雨量が増えると土砂災害・浸水・洪水が起きやすい理由
2000年東海豪雨でも内水氾濫が発生
都市型水害を考えるうえで代表的な災害の一つが、2000年9月の東海豪雨です。
名古屋都市圏で大規模な浸水
東海豪雨では、秋雨前線へ暖かく湿った空気が流れ込み、東海地方で記録的な大雨となりました。
新川では堤防が決壊しましたが、それだけが浸水原因ではありません。
各地で排水能力を超える雨などによる内水氾濫も発生しました。
都市は川が決壊しなくても水害になる
東海豪雨が示した重要なポイントの一つが、都市部の水害は「大河川の堤防が決壊するかどうか」だけでは決まらないことです。
下水道や排水施設で処理できないほど雨が集中すれば、都市内部から浸水が始まります。
▶ 2000年東海豪雨はなぜ大被害に?新川決壊・都市型水害とその後の対策を解説
内水氾濫の危険な場所はどう調べる?
自宅の周辺で内水氾濫が起こる可能性があるかどうかは、事前に調べることができます。
内水ハザードマップ・浸水想定区域を確認
自治体によっては、内水氾濫によってどこがどの程度浸水する可能性があるかを示したハザードマップを公表しています。
国土交通省でも、自治体が作成した雨水出水(内水)浸水想定区域のデータを公開しています。
特に、
- 自宅
- 職場
- 学校
- 通勤経路
- よく使う道路
が低い場所にないか確認しておくことが重要です。
洪水ハザードマップだけでは不十分なこともある
洪水ハザードマップは主に河川氾濫による浸水を想定しています。
内水氾濫について別のマップを作っている自治体もあります。
「洪水ハザードマップでは色が付いていないから絶対安全」と考えず、自治体が内水に関する情報も公開していないか確認するとよいでしょう。
大雨の最中は何を確認する?
大雨が始まってからは、雨量だけでなく災害危険度を見ることが重要です。
気象庁の浸水害に関する情報を確認
短時間の強雨などによる浸水害については、気象庁の大雨に関する情報や危険度分布などを確認します。
周囲で道路冠水が始まっている場合は、無理に外へ出ないことも重要です。
河川水位も合わせて確認する
本川の水位上昇によって排水できなくなるタイプの内水氾濫では、川の状況も重要です。
大雨が続いているときには、自宅周辺の雨だけでなく河川水位や自治体の避難情報も合わせて確認してください。
道路が冠水していたら歩いて渡っていい?
できるだけ避けるべきです。
水の下が見えない
冠水道路では、
- 側溝
- 段差
- 穴
- マンホール
などが見えません。
普段よく知っている道でも、大雨時には状況が大きく変わっています。
流れがあると浅くても危険
水深だけでなく流れの速さも重要です。
避難する場合は、冠水が進んでから移動するのではなく、安全に移動できる段階で行動することが基本です。
内水氾濫に備えて準備しておきたいもの
内水氾濫は、川が決壊していなくても短時間で道路や住宅周辺が冠水することがあります。
大雨が始まってから外へ買い物に出るのは危険になる場合があるため、平常時に最低限の防災用品を確認しておくことが大切です。
特に停電や断水が起きた場合に備えて、明かり、情報を得る手段、スマートフォンの電源、トイレ対策を準備しておくと役立ちます。
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内水氾濫についてよくある質問
内水氾濫とは何ですか?
街に降った雨を下水道や側溝などで排水しきれなかったり、川の水位が高くなって雨水を排出できなくなったりして、道路や住宅地などに水があふれる現象です。
川がない場所でも内水氾濫は起きる?
起きる可能性があります。
排水能力を超える雨による内水氾濫は、大きな河川から離れた場所でも発生します。
内水氾濫と洪水は違う?
一般に、河川の水が堤防を越えたり決壊したりして街へ流れ出すものは外水氾濫と呼ばれます。
内水氾濫は街側の雨水を排出できないことで起きます。
マンホールから水が出るのも内水氾濫?
大雨によって下水道へ流れ込む水が処理能力を超え、マンホールなどから水があふれる場合があります。
アンダーパスはなぜ危険?
周囲より低い場所にあるため雨水が集まりやすく、排水能力を超えると短時間で水深が増える場合があるためです。
内水氾濫はどのくらいの雨で起きる?
地域の地形や排水能力などによって異なるため、「全国一律で1時間○mmなら発生する」とは言えません。
自宅が危険かどうかはどう調べる?
自治体が公開している内水ハザードマップや雨水出水(内水)浸水想定区域などを確認します。
まとめ|内水氾濫は「川の水」ではなく「街の雨水が出ていかない」水害
内水氾濫についてまとめると、
- 街に降った雨を排水できなくなることで起きる
- 下水道や側溝の排水能力を超える豪雨が原因になる
- 川の水位が高くなり雨水を排出できなくなる場合もある
- 河川の堤防が決壊しなくても発生する
- 川から離れた住宅地でも起きることがある
- 都市部では雨水が地面にしみ込みにくい
- 低い道路やアンダーパスへ水が集まりやすい
- 地下街や地下駐車場へ水が流れ込む危険もある
- マンホールから水があふれる場合もある
- 短時間豪雨だけでなく長雨でも危険が高まることがある
- 自治体の内水ハザードマップなどで危険な場所を確認できる
という特徴があります。
内水氾濫で覚えておきたいのは、
「川が決壊していない=水害は起きない」ではない
ということです。
街へ降った雨も、最終的にはどこかへ排水しなければなりません。
その量が排水施設の能力を超えたり、出口となる川の水位が高くなったりすれば、水は街の中にたまり始めます。
特に線状降水帯や台風、前線などによって短時間の激しい雨や長時間大雨が予想される場合は、河川の近くに住んでいない人も浸水リスクを確認しておくことが重要です。
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