エルニーニョ現象は、「太平洋の海面水温が高くなる現象」と説明されることが多い気象現象です。
しかし、ここで疑問になるのが、
- なぜ突然、海面水温が高くなる?
- 海そのものが急に温められる?
- 貿易風が弱まるとなぜエルニーニョになる?
- ペルー沖の海が暖かくなるのはなぜ?
- 最初に変わるのは風?それとも海?
という点です。
結論からいうと、エルニーニョは「海」と「大気」が互いに影響しながら変化することで発達する現象です。
通常は赤道付近を東から西へ吹く貿易風が、暖かい表面海水を西太平洋へ押し寄せています。
ところが何らかのきっかけで貿易風が弱まると、西側に集まっていた暖かい海水が中央~東太平洋へ広がり、南米沖では冷たい深層水の湧昇も弱まります。
すると東太平洋の海面水温がさらに高くなり、その変化が今度は大気を変えて貿易風をさらに弱めることがあります。
この「風が弱まる→海が暖まる→さらに風が弱まる」という海と大気の相互作用が、エルニーニョを発達させる重要な仕組みです。
- まず通常の太平洋はどうなっている?
- なぜ西太平洋の方が暖かい?
- では東太平洋はなぜ冷たい?
- 湧昇はなぜ重要?
- 平常時には大気も東西に循環している
- ウォーカー循環とは?
- エルニーニョは何が変わると始まる?
- 海水が東へ流れるだけでエルニーニョになる?
- エルニーニョ発生までを順番に整理
- なぜ海が暖まると貿易風がさらに弱くなる?
- 「風が弱まる→海が暖まる→風がさらに弱まる」とは?
- この仕組みに名前はある?
- では最初に貿易風が弱まるのはなぜ?
- 西風バーストもエルニーニョに関係する?
- 海の中では何が起こっている?
- ケルビン波とは?
- 南米沖の水温はどれくらい変わる?
- 海面水温が1℃違うだけでも影響する?
- エルニーニョではウォーカー循環はどうなる?
- エルニーニョとラニーニャでは貿易風が逆?
- ラニーニャでは海はどうなる?
- エルニーニョは太陽が強く照るから起こる?
- 地球温暖化がエルニーニョを起こす?
- なぜエルニーニョはずっと続かない?
- エルニーニョの次は必ずラニーニャ?
- エルニーニョはどこで発生している?
- なぜ遠い日本にも影響する?
- エルニーニョの仕組みを一言でいうと?
- エルニーニョの仕組みを詳しく知る
- エルニーニョが起こる仕組みについてよくある質問
- まとめ|エルニーニョは貿易風と海面水温が互いに変化を強めて発生する
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まず通常の太平洋はどうなっている?
エルニーニョを理解するには、まず平常時の赤道太平洋を見る必要があります。
貿易風が東から西へ吹いている
赤道付近の太平洋では、普段は東寄りの貿易風が吹いています。
つまり南米側からインドネシア・フィリピン側へ向かうような風です。
表面の暖かい海水も西へ押される
海面付近の暖かい水も、この風によって西へ押されます。
そのため西太平洋では暖水が厚くたまり、東太平洋側では相対的に冷たい水が海面近くに現れやすくなります。
なぜ西太平洋の方が暖かい?
貿易風が暖水を西へ運ぶ
太陽によって暖められた表面海水は、貿易風によって長期間西方向へ押されます。
インドネシア周辺に暖水が集まる
その結果、インドネシアや西太平洋周辺には非常に暖かい海水が集まります。
この暖かい海域は「暖水プール」などと呼ばれることがあります。
では東太平洋はなぜ冷たい?
表面の海水が西へ運ばれる
南米沖では表面の海水が西へ押されるため、その不足を補うように海の深いところから水が上がってきます。
深いところの冷たい水が湧き上がる
この現象を「湧昇」といいます。
海の深い場所の水は表面より冷たいため、ペルー沖や東太平洋では海面水温が低くなりやすくなります。
湧昇はなぜ重要?
東太平洋を冷やす働きがある
冷たい深層水が海面へ上がることで、南米沿岸や東部赤道太平洋の海面水温が低く保たれます。
栄養分も海面へ運ぶ
深層水には栄養塩が豊富に含まれるため、湧昇は植物プランクトンや魚類にも重要です。
このためペルー沖は世界有数の漁場としても知られています。
平常時には大気も東西に循環している
海面水温の違いは、大気の流れも作ります。
西太平洋では上昇気流
暖かい西太平洋では海から多くの熱と水蒸気が供給され、積乱雲が発達しやすくなります。
そのため空気が上昇します。
東太平洋では下降気流
比較的冷たい東太平洋側では積乱雲が少なく、下降気流が起こりやすくなります。
この東西方向の大気循環をウォーカー循環と呼びます。
ウォーカー循環とは?
赤道太平洋を東西に回る大気循環
平常時には西太平洋で空気が上昇し、上空を東へ移動します。
東太平洋側で下降した後、地表付近では再び西へ戻ります。
地表付近の西向きの流れが貿易風
つまり、貿易風とウォーカー循環は別々のものではなく、大きな大気循環の一部としてつながっています。
エルニーニョは何が変わると始まる?
重要な変化の一つが貿易風の弱まりです。
東から西へ押す力が弱くなる
貿易風が平年より弱くなると、暖水を西太平洋へ押し続ける力も弱まります。
西にたまった暖水が東へ広がる
その結果、西太平洋に厚くたまっていた暖かい海水が中央太平洋から東太平洋方向へ移動・拡大しやすくなります。
海水が東へ流れるだけでエルニーニョになる?
それだけではありません。
湧昇も弱くなる
貿易風が弱まると、南米沖で表面海水を西へ運ぶ働きも弱くなります。
そのため冷たい深層水が海面へ上がる湧昇が弱まります。
東太平洋を冷やす力が弱くなる
冷水の供給が減るため、東太平洋の海面水温はさらに上がりやすくなります。
エルニーニョ発生までを順番に整理
| 段階 | 起こること |
|---|---|
| 通常 | 強い貿易風が暖水を西へ運ぶ |
| ① | 貿易風が弱まる |
| ② | 西太平洋の暖水が東へ広がる |
| ③ | 南米沖の湧昇が弱まる |
| ④ | 中・東部太平洋の海面水温が上昇 |
| ⑤ | 積乱雲が活発な場所が東へ移る |
| ⑥ | ウォーカー循環が弱まる |
| ⑦ | 貿易風がさらに弱まりやすくなる |
このように、海と大気が互いに変化を強め合います。
なぜ海が暖まると貿易風がさらに弱くなる?
積乱雲の発生場所が東へ移る
暖かい海面では上昇気流や積乱雲が発達しやすくなります。
エルニーニョによって暖水が中央~東太平洋へ広がると、活発な積乱雲の場所も東側へ移動します。
東西の気圧差が小さくなる
平常時のウォーカー循環を支えていた東西の温度差や気圧差が弱まります。
その結果、地表付近を東から西へ吹く貿易風も弱くなります。
「風が弱まる→海が暖まる→風がさらに弱まる」とは?
これはエルニーニョの重要な正のフィードバックです。
最初の変化が次の変化を強める
貿易風が少し弱くなると暖水が東へ広がります。
すると大気循環も変わり、さらに貿易風が弱まりやすくなります。
現象が自己強化する
その結果、中央~東太平洋の高い海面水温がさらに強まり、エルニーニョが発達していきます。
この仕組みに名前はある?
海洋と大気の結合フィードバック
海面水温と風が互いに影響し合う仕組みです。
ビヤークネス・フィードバックと呼ばれる
ENSOを説明するとき、この正の相互作用は一般にビヤークネス・フィードバックと呼ばれます。
エルニーニョが単なる海水温の異常ではなく、大気と海洋が一体になった現象だと分かる重要な考え方です。
では最初に貿易風が弱まるのはなぜ?
ここは「原因はこれ一つ」と単純には説明できません。
大気にはもともとさまざまな変動がある
熱帯太平洋では、季節より短い時間スケールでも風や積乱雲の分布が変動しています。
こうした大気の変動が貿易風を一時的に弱める場合があります。
海洋内部の状態も関係する
西太平洋の海中にどの程度暖かい水が蓄えられているかなど、海洋側の状態もエルニーニョの発達しやすさに関係します。
つまり、エルニーニョには単一の「スタートボタン」があるわけではありません。
西風バーストもエルニーニョに関係する?
関係する場合があります。
一時的に西寄りの風が強まる
通常の貿易風とは逆方向の西風が赤道西太平洋で一時的に強まることがあります。
暖水を東へ動かすきっかけになる場合がある
こうした西風の変動は、海洋内部に波を生み、暖かい水を東へ移動させるきっかけの一つになることがあります。
ただし西風が吹けば必ずエルニーニョになるという意味ではありません。
海の中では何が起こっている?
海面だけが変わるわけではない
エルニーニョでは、表面の水温だけでなく海洋内部の暖水の厚さも変化します。
暖かい水の層が東へ移動する
貿易風が弱まると、西太平洋側に厚くたまっていた暖水層が東へ広がっていきます。
そのため東太平洋では冷たい深層水が海面近くへ上がりにくくなります。
ケルビン波とは?
赤道に沿って海の変化を東へ伝える波
風の変化によって、赤道付近の海洋内部を東向きに進む海洋波が発生することがあります。
東太平洋の暖水化につながることがある
暖かい水の層を深くするタイプのケルビン波が東へ進むと、東太平洋の海面下が暖まり、エルニーニョ発達を後押しする場合があります。
南米沖の水温はどれくらい変わる?
強いエルニーニョでは大きな差になります。
平年より数℃高くなることがある
気象庁によると、エルニーニョ監視海域では平年より最大4℃程度高くなることがあります。
広い海域で長期間続く
重要なのは、1地点だけの水温が上がるのではなく、非常に広い太平洋赤道域で高温状態が何か月も続くことです。
海面水温が1℃違うだけでも影響する?
広大な海では大きな意味があります。
海は大量の熱を蓄えられる
海水は非常に大きな熱容量を持っています。
広い海域で平均水温が1℃変われば、大気との熱や水蒸気のやり取りも大きく変化します。
積乱雲の発生場所まで変わる
その結果、熱帯の降水帯や大気循環が移動し、日本を含む遠く離れた地域の天候へ影響します。
▶ 海面水温が1℃高いとどれくらい違う?エルニーニョの「+1℃」を体感で解説(準備中)
エルニーニョではウォーカー循環はどうなる?
弱まる
平常時に強い東西の海面水温差が小さくなるため、ウォーカー循環も平常時より弱くなります。
上昇気流の位置も東へ移る
通常はインドネシア周辺で活発な上昇気流や積乱雲が、中央太平洋から東太平洋側へ移りやすくなります。
エルニーニョとラニーニャでは貿易風が逆?
風向そのものが完全に逆転するという意味ではありません。
エルニーニョでは貿易風が弱い
東から西へ吹く通常の貿易風が平年より弱くなる傾向があります。
ラニーニャでは貿易風が強い
ラニーニャでは太平洋の東西の海面水温差が大きくなり、ウォーカー循環と貿易風が強まります。
▶ エルニーニョとラニーニャの違いは?日本への影響・周期・覚え方を比較
ラニーニャでは海はどうなる?
暖水がさらに西へ押される
強くなった貿易風によって、暖かい表面海水が西太平洋側へさらに集まりやすくなります。
東太平洋の湧昇が強くなる
東側では深い海から冷水が上がりやすくなり、海面水温が平年より低くなります。
つまりラニーニャは、平常時の東西差がより強調された状態と考えると分かりやすいでしょう。
エルニーニョは太陽が強く照るから起こる?
そのような単純な現象ではありません。
海面への日射だけでは説明できない
エルニーニョの本質は、赤道太平洋の風、海流、湧昇、海洋内部の熱、大気循環が一体となって変化することです。
熱が地球上で再分配される
エルニーニョでは、特に太平洋内部に蓄えられていた熱の分布が変わり、海から大気へ放出されやすくなります。
地球温暖化がエルニーニョを起こす?
エルニーニョそのものは自然な気候変動です。
温暖化以前から発生してきた
ENSOは昔から繰り返されてきた海洋・大気変動です。
将来の強さや頻度との関係は研究中
地球温暖化によってENSOの特徴が今後どう変わるかについては研究が続いています。
「エルニーニョが起きた=地球温暖化が直接原因」と考えるのは適切ではありません。
なぜエルニーニョはずっと続かない?
海と大気には、発達を止める方向の変化も起きるからです。
暖水が東へ移動すると西側の熱が減る
エルニーニョが発達する過程で、西太平洋に蓄えられていた暖水が中央・東太平洋へ移動します。
やがて状態が反転することもある
海洋内部の波や熱の再分配などによって東太平洋の高温状態が弱まり、平常状態へ戻ったり、ラニーニャへ移行したりします。
エルニーニョの次は必ずラニーニャ?
必ずではありません。
強いエルニーニョの後に移行する例はある
1997~1998年の非常に強いエルニーニョは1998年夏に終わり、同年秋からラニーニャへ移行しました。
そのまま平常状態になる場合もある
毎回エルニーニョとラニーニャが交互に続くわけではありません。
▶ エルニーニョの周期は何年?発生頻度・過去の発生年・前回はいつか解説
エルニーニョはどこで発生している?
太平洋赤道域
中心となるのは赤道付近の太平洋です。
日本の近海で発生しているわけではない
日本から何千kmも離れた熱帯太平洋の海面水温や大気循環が変化し、その影響が大気を通じて日本まで伝わります。
なぜ遠い日本にも影響する?
熱帯の積乱雲は大気循環を変える
エルニーニョによって積乱雲が活発な場所が変化すると、上空の風や気圧配置にも影響します。
偏西風や高気圧へ影響が伝わる
その結果、日本付近の偏西風や太平洋高気圧などの位置・強さが変わり、夏や冬の気温・降水量にも影響します。
▶ エルニーニョ現象とは?なぜ日本で暖冬や大雪が起こることがあるのか仕組みを解説
エルニーニョの仕組みを一言でいうと?
「貿易風・暖水・湧昇・大気循環が互いに影響し、中央~東太平洋が暖まっていく現象」です。
単なる海水温上昇ではない
海だけを見てもエルニーニョの仕組みは説明できません。
大気と海洋が一体になっている
そのためエルニーニョと南方振動を合わせた「ENSO」という言葉が使われます。
エルニーニョの仕組みを詳しく知る
貿易風やウォーカー循環、海洋内部の波まで理解すると、エルニーニョがなぜ世界の天候を変えるのか理解しやすくなります。
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エルニーニョが起こる仕組みについてよくある質問
エルニーニョはなぜ起こるのですか?
赤道太平洋で貿易風が弱まり、西太平洋の暖水が東へ広がり、南米沖の冷たい水の湧昇が弱まることで中央~東太平洋の海面水温が高くなります。
さらに海面水温の変化が大気循環を変え、現象を強めます。
貿易風とは何ですか?
熱帯の海面付近を主に東から西へ吹く風です。
赤道太平洋の暖水を西へ運ぶ重要な役割があります。
なぜ貿易風が弱まるのですか?
原因を一つに限定することはできません。
熱帯大気の変動や海洋内部の状態などが関係し、風と海面水温が相互作用しながら発達します。
貿易風が弱まると何が起こりますか?
暖水を西へ押す力が弱まり、西太平洋にたまっていた暖かい水が中央・東太平洋へ広がりやすくなります。
なぜペルー沖の海水温が上がるのですか?
暖水が東へ広がることに加え、貿易風が弱まることで冷たい深層水の湧昇も弱まるためです。
ウォーカー循環とは何ですか?
熱帯太平洋で、西側の上昇気流と東側の下降気流、地表付近の貿易風などからなる東西方向の大気循環です。
エルニーニョではウォーカー循環はどうなりますか?
太平洋東西の海面水温差が小さくなり、ウォーカー循環と貿易風が弱まる傾向があります。
エルニーニョは海だけの現象ですか?
いいえ。海面水温と大気循環が互いに影響し合う海洋・大気結合現象です。
ラニーニャでは貿易風はどうなりますか?
平年より強くなる傾向があります。
その結果、暖水が西へ集まり、東太平洋では冷たい水の湧昇が強まります。
地球温暖化がエルニーニョの原因ですか?
エルニーニョ自体は自然な気候変動です。
温暖化との将来的な関係は研究されていますが、個々の発生を温暖化だけで説明することはできません。
まとめ|エルニーニョは貿易風と海面水温が互いに変化を強めて発生する
エルニーニョが起こる仕組みをまとめると、
- 通常は貿易風が東から西へ吹く
- 暖かい表面海水は西太平洋へ集まる
- 東太平洋では冷たい深層水が湧昇する
- 西太平洋では積乱雲が発達しやすい
- この東西循環をウォーカー循環という
- 何らかのきっかけで貿易風が弱まることがある
- 暖水を西へ押す力が弱くなる
- 西太平洋の暖水が中央~東太平洋へ広がる
- 南米沖の湧昇も弱まる
- 中央~東太平洋の海面水温が上昇する
- 積乱雲の活発な場所が東へ移る
- ウォーカー循環が弱まる
- 貿易風がさらに弱まりやすくなる
- 風と海が互いに変化を強め合う
- 単一の原因や一つのスタートボタンがあるわけではない
となります。
最も重要なのは、エルニーニョを「海が勝手に暖まる現象」と考えないことです。
風が海を動かし、海面水温が大気を変え、その大気の変化が再び風を変えます。
この海と大気の相互作用によって、太平洋中央部から東部の暖かい状態が発達していきます。
だからこそエルニーニョは単なる海水温異常ではなく、世界の天候まで変える大規模な海洋・大気現象なのです。
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