1998年(平成10年)は、日本各地で記録的な豪雨災害が発生した年です。
特に大きかったのが、
- 8月26日~31日の「平成10年8月末豪雨」
- 9月23日~25日の高知県を中心とした記録的大雨
です。
そして1998年は、気候の面でも非常に興味深い年でした。
1997年春から続いていた非常に強いエルニーニョ現象が1998年夏に終わり、1998年秋にはラニーニャ現象へ移行したからです。
すると、
- 1998年の豪雨はエルニーニョと関係していた?
- ラニーニャへ変わったから大雨になった?
- なぜ栃木・福島や高知で記録的豪雨になった?
- 同じ年に大雨災害が相次いだのは偶然?
と疑問に思うでしょう。
結論からいうと、1998年の豪雨を「エルニーニョやラニーニャが直接起こした」と説明することはできません。
実際の豪雨を直接起こしたのは、停滞した前線、台風、高気圧の縁を回って流れ込んだ暖かく湿った空気などです。
一方で、1998年が非常に強いエルニーニョからラニーニャへ移行した時期だったことは、その年の大規模な大気・海洋状態を理解する上で重要な背景の一つです。
この記事では、1998年に日本で起きた代表的な豪雨とENSOの変化を分けて整理します。
- 1998年はどんな年だった?
- 1998年のENSOを時系列で見る
- 1998年8月末豪雨とは?
- 平成10年8月末豪雨の被害は?
- 8月末豪雨はなぜ起きた?
- なぜ栃木・福島で特に雨が強くなった?
- その約1か月後には高知でも記録的大雨
- 1998年高知豪雨はなぜ起きた?
- 高知豪雨の被害は?
- 2つの豪雨には共通点がある?
- 大雨が何日も続く仕組みと同じ?
- では1998年の豪雨はエルニーニョが原因?
- ラニーニャが原因だった?
- なぜENSOを豪雨記事で取り上げる意味がある?
- 1998年はエルニーニョからラニーニャへ急変した?
- 1998年にはインド洋でも変化があった?
- 「同じ年に豪雨が多い=共通原因」とは限らない
- 1998年8月末豪雨と高知豪雨を比較
- 雨量1,254mmはどれくらい?
- 高知の1時間129.5mmはどれくらい危険?
- 1998年の豪雨から分かる「長雨の怖さ」
- 1998年豪雨を現在の防災にどう生かす?
- エルニーニョ・ラニーニャ情報は防災情報ではない
- 1998年を見ると気候と天気の違いが分かる
- Amazonで豪雨・異常気象を詳しく知る
- 1998年の豪雨とエルニーニョについてよくある質問
- まとめ|1998年はENSOが大きく転換した年だが、豪雨の直接原因は前線と暖湿流
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1998年はどんな年だった?
非常に強いエルニーニョが終息した年
1997年春から1998年夏にかけて、非常に強いエルニーニョ現象が発生していました。
気象庁のエルニーニョ監視海域では、1997年12月に月平均海面水温偏差が+3.6℃に達しています。
1998年秋からラニーニャへ
そのエルニーニョは1998年夏に終息し、1998年秋から1999年春にかけてラニーニャ現象が発生しました。
つまり1998年は、太平洋赤道域の状態がエルニーニョからラニーニャへ大きく転換した年でした。
1998年のENSOを時系列で見る
| 時期 | 太平洋赤道域の状態 |
|---|---|
| 1997年春 | エルニーニョ発生 |
| 1997年12月 | NINO.3偏差 最大+3.6℃ |
| 1998年春 | エルニーニョ継続 |
| 1998年夏 | エルニーニョ終息 |
| 1998年8月26~31日 | 平成10年8月末豪雨 |
| 1998年9月23~25日 | 高知県で記録的大雨 |
| 1998年秋 | ラニーニャ発生 |
| 1999年春 | ラニーニャ継続 |
こうして並べると、豪雨災害がエルニーニョ終息からラニーニャ移行の時期に起きていることが分かります。
ただし、時期が重なっていることと、直接の原因であることは別です。
1998年8月末豪雨とは?
1998年8月26日から31日にかけて、北日本から東日本の広い範囲で大雨となりました。
栃木県北部から福島県で記録的大雨
特に被害が大きかったのが栃木県北部から福島県にかけてです。
この大雨は「平成10年8月末豪雨」と呼ばれています。
那須では期間降水量1,254mm
栃木県那須では、8月27日の日降水量が607mmに達しました。
8月26日から31日までの期間降水量は1,254mmとなり、非常に大量の雨が降りました。
平成10年8月末豪雨の被害は?
死者・行方不明者22人
気象庁が消防白書をもとにまとめた記録では、死者・行方不明者は22人、負傷者は55人でした。
浸水被害も広範囲に発生
住家は全壊122棟、半壊142棟、床上浸水3,332棟、床下浸水11,517棟など、大きな被害となりました。
8月末豪雨はなぜ起きた?
直接原因は、前線の停滞と大量の暖湿気です。
前線が本州付近に長期間停滞
8月26日から31日にかけて、前線が本州付近に停滞していました。
同じ地域で雨が繰り返し降りやすい気圧配置になっていたのです。
台風4号が南海上をゆっくり北上
同じ時期、日本の南海上では台風4号がゆっくり北上していました。
日本の東にある高気圧と台風の影響によって、前線へ暖かく湿った空気が流れ込み続けました。
なぜ栃木・福島で特に雨が強くなった?
暖湿気が前線へ集中した
大量の水蒸気を含んだ空気が前線付近へ流れ込むことで、雨雲が繰り返し発達しました。
同じ地域で豪雨が続いた
特に26日夜から27日朝にかけて、栃木県と福島県の県境付近を中心に猛烈な雨となりました。
こうした「前線が動かない+湿った空気が補給され続ける」という組み合わせは、長時間豪雨の典型的なパターンです。
その約1か月後には高知でも記録的大雨
1998年9月23日から25日にかけて、今度は高知県を中心に記録的大雨となりました。
高知で1時間129.5mm
高知では9月24日に1時間129.5mmという猛烈な雨を観測しました。
1日で628.5mm
同日の高知の日降水量は628.5mmでした。
さらに繁藤では24日の日降水量が735mm、23~25日の期間降水量が995mmに達しました。
1998年高知豪雨はなぜ起きた?
こちらも大きなポイントは前線と暖湿気です。
前線が四国付近に停滞
9月23日から24日にかけて前線が四国の南海上から瀬戸内付近まで北上し、その後25日朝まで停滞しました。
高気圧の縁を回る暖湿気が流入
この前線へ向かって、高気圧の縁を回る暖かく湿った空気が流れ込みました。
その結果、高知市とその周辺では長時間にわたって激しい雨が続きました。
高知豪雨の被害は?
死者9人・負傷者14人
気象庁が消防白書をもとにまとめた記録では、死者9人、負傷者14人となっています。
床上浸水8,631棟
住家は全壊31棟、半壊33棟、床上浸水8,631棟、床下浸水11,122棟など、大規模な浸水被害が発生しました。
2つの豪雨には共通点がある?
場所は大きく離れていますが、気象の仕組みには共通点があります。
前線が停滞した
8月末豪雨でも高知豪雨でも、前線が日本付近に停滞しました。
暖かく湿った空気が流れ込み続けた
どちらの事例でも、南側などから大量の水蒸気を含んだ空気が前線へ供給され続けました。
つまり1998年の代表的な豪雨では、「動かない前線+継続する暖湿流」という組み合わせが重要でした。
大雨が何日も続く仕組みと同じ?
基本的な考え方は同じです。
前線が移動すれば雨域も移動する
通常、前線が移動すれば強い雨の地域も変わっていきます。
停滞すると同じ地域で雨量が積み上がる
ところが前線が長時間同じ場所にあると、雨雲が繰り返し発生し、総雨量が非常に大きくなることがあります。
特に暖かく湿った空気が途切れず供給されると危険です。
では1998年の豪雨はエルニーニョが原因?
直接原因とは言えません。
エルニーニョは大規模な気候変動
エルニーニョは熱帯太平洋の海面水温と大気循環が数か月から1年程度のスケールで変化する現象です。
豪雨は数時間~数日の気象条件で発生
一方、1998年8月末豪雨や高知豪雨を直接引き起こしたのは、前線、台風、高気圧、暖湿気など、その時の具体的な気圧配置でした。
時間的・空間的なスケールが異なります。
ラニーニャが原因だった?
これも「ラニーニャだから豪雨になった」とは言えません。
1998年秋からラニーニャ
気象庁の確定資料では、1998年秋からラニーニャ現象が発生しています。
個別豪雨との一対一対応はできない
ラニーニャは日本付近を含む世界の大気循環へ影響することがあります。
しかし「ラニーニャになったから9月の高知豪雨が発生した」という一対一の因果関係を示すものではありません。
なぜENSOを豪雨記事で取り上げる意味がある?
直接原因ではなくても、気候背景を理解するためです。
熱帯太平洋は大気循環を変える
エルニーニョやラニーニャが発生すると、積乱雲が活発になる場所や貿易風などが変化します。
日本周辺の天候へも影響が伝わる
その変化は偏西風、高気圧などを通じて遠く離れた日本へ影響することがあります。
そのため個別豪雨の直接原因ではなくても、その年の気候背景を理解する材料になります。
1998年はエルニーニョからラニーニャへ急変した?
春までは非常に強いエルニーニョの影響
1997~1998年のエルニーニョは、NINO.3海域の月平均偏差が最大+3.6℃となった非常に強い事例でした。
秋にはラニーニャ状態
その後、海面水温は低下し、1998年秋からはラニーニャ現象の発生期間に入っています。
1年の中で太平洋赤道域の状態が大きく変化したことになります。
1998年にはインド洋でも変化があった?
ありました。
1998年夏~秋は負のインド洋ダイポールモード
気象庁の確定資料では、1998年夏から秋にかけて負のインド洋ダイポールモード現象も発生しています。
気候はENSO一つだけでは説明できない
熱帯の海洋変動には太平洋だけでなくインド洋も関係します。
このことからも、1998年の日本の天候を「エルニーニョだけ」「ラニーニャだけ」で説明するのは適切ではありません。
「同じ年に豪雨が多い=共通原因」とは限らない
各災害には個別の気象状況がある
栃木・福島の豪雨と高知豪雨では、どちらも前線と暖湿気が重要だった一方、具体的な気圧配置や地域条件は異なります。
年単位の気候背景と災害原因を分ける
複数の災害が同じ年に起きたからといって、すべてに一つの共通原因があるとは限りません。
気候現象を見るときには、この切り分けが重要です。
1998年8月末豪雨と高知豪雨を比較
| 項目 | 平成10年8月末豪雨 | 1998年9月高知豪雨 |
|---|---|---|
| 期間 | 8月26~31日 | 9月23~25日 |
| 主な地域 | 栃木県・福島県など | 高知県など |
| 主因 | 停滞前線+台風4号+暖湿流 | 停滞前線+暖湿流 |
| 代表的雨量 | 那須 期間1,254mm | 繁藤 期間995mm |
| 1日の代表値 | 那須 607mm | 繁藤 735mm |
| 特徴 | 栃木・福島県境付近で豪雨 | 高知市周辺で長時間猛烈な雨 |
雨量1,254mmはどれくらい?
1,254mmという雨量は非常に大きな数字です。
1㎡あたり約1,254L
雨量1mmは、水平な1㎡に約1Lの水が降る量です。
そのため1,254mmなら、単純計算で1㎡あたり約1,254Lです。
重さにすると約1.25トン
水1Lを約1kgとして考えると、1㎡あたり約1.25トンの水に相当します。
もちろん実際には流出・浸透しますが、豪雨の水量の大きさをイメージできます。
高知の1時間129.5mmはどれくらい危険?
1㎡へ1時間で約129.5L
1時間129.5mmなら、1㎡あたり約129.5Lの雨がわずか1時間で降った計算になります。
排水能力を大きく超える場合がある
これほど激しい雨では、道路や市街地の排水が追いつかず、短時間で冠水・浸水が発生する危険があります。
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1998年の豪雨から分かる「長雨の怖さ」
瞬間的な雨量だけではない
豪雨災害では「1時間に何mm降ったか」が注目されますが、長期間の総雨量も非常に重要です。
土壌や河川に水が蓄積する
雨が何日も続くと地中に水が蓄積し、土砂災害の危険が高まります。
河川でも上流域から水が集まり続けるため、雨が弱くなった後に水位が上昇する場合があります。
1998年豪雨を現在の防災にどう生かす?
「雨がまだ弱い」段階から総雨量を見る
長雨では、その瞬間の雨の強さだけではなく、これまでどのくらい降ったかを見ることが重要です。
前線が停滞しているときは長期化を警戒
前線の位置が数日間ほとんど変わらず、南から暖湿気が流れ込み続ける予報の場合は、雨量が積み上がる可能性があります。
エルニーニョ・ラニーニャ情報は防災情報ではない
数か月規模の気候情報
ENSO情報は、季節全体の気候傾向を見る上では重要です。
避難判断には直近の防災情報を使う
実際の大雨時には、大雨警報、洪水警報、キキクル、河川水位、自治体の避難情報などを確認する必要があります。
「今年はエルニーニョだから」「ラニーニャだから」という情報だけで避難判断をするものではありません。
1998年を見ると気候と天気の違いが分かる
ENSO=気候の背景
エルニーニョ・ラニーニャは数か月以上続く大規模な海洋・大気変動です。
豪雨=その日の具体的な気象現象
前線、低気圧、台風、暖湿流などが数時間から数日のスケールで重なり、実際の豪雨を引き起こします。
「背景」と「直接原因」を分けることが、異常気象を理解する重要なポイントです。
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1998年のような豪雨災害を理解するには、前線や台風だけでなく、エルニーニョ・ラニーニャなど大規模な気候変動も合わせて見ると理解しやすくなります。
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1998年の豪雨とエルニーニョについてよくある質問
1998年はエルニーニョでしたか?
1998年夏までは、1997年春から続いていた非常に強いエルニーニョ現象の発生期間でした。
1998年はラニーニャでもあったのですか?
はい。
気象庁の確定資料では1998年秋からラニーニャ現象が発生しています。
1998年のエルニーニョはどのくらい強かったですか?
1997~1998年の発生期間中、NINO.3海域の月平均海面水温偏差は最大+3.6℃に達しました。
1998年の豪雨はエルニーニョが原因ですか?
直接原因とは言えません。
個々の豪雨を直接起こしたのは、停滞前線、台風、暖湿気などです。
ラニーニャになったから高知で豪雨になったのですか?
そのような一対一の因果関係を示すことはできません。
高知豪雨では前線の停滞と高気圧の縁を回る暖湿気の流入が直接的な要因でした。
平成10年8月末豪雨はどこで被害が大きかったですか?
特に栃木県北部から福島県にかけて記録的な大雨となりました。
那須ではどのくらい雨が降りましたか?
8月27日の日降水量は607mm、8月26~31日の期間降水量は1,254mmでした。
1998年の高知ではどのくらい雨が降りましたか?
高知では9月24日に1時間129.5mm、日降水量628.5mmを観測しました。
なぜ1998年の豪雨では雨が長く続いたのですか?
前線が停滞し、そこへ暖かく湿った空気が流れ込み続けたことが重要です。
エルニーニョ情報で大雨を予測できますか?
個別の大雨を直接予測するものではありません。
実際の防災では最新の天気予報、警報、キキクル、河川情報などを確認する必要があります。
まとめ|1998年はENSOが大きく転換した年だが、豪雨の直接原因は前線と暖湿流
1998年の豪雨とエルニーニョ・ラニーニャの関係をまとめると、
- 1997年春~1998年夏に非常に強いエルニーニョが発生
- NINO.3海面水温偏差の最大は+3.6℃
- 1998年秋からラニーニャへ移行
- 1998年8月26~31日に平成10年8月末豪雨が発生
- 栃木県北部~福島県で特に記録的大雨
- 那須の期間降水量は1,254mm
- 前線と台風4号の影響で暖湿気が流入した
- 約1か月後には高知県でも記録的大雨
- 高知で1時間129.5mm
- 繁藤では1日735mm・期間995mm
- 高知豪雨でも前線の停滞と暖湿流が重要だった
- 2つの豪雨には「停滞前線+暖湿流」という共通点がある
- エルニーニョやラニーニャを豪雨の直接原因とは言えない
- ENSOは大規模な気候背景として考える
- 個別豪雨の直接原因と気候背景を分けて考えることが重要
となります。
1998年は確かに特別な年でした。
非常に強かった1997~1998年エルニーニョが終息し、その年の秋にはラニーニャへ移行しています。
そして同じ時期、日本では8月末豪雨や高知豪雨など記録的な大雨災害が相次ぎました。
しかし、「エルニーニョが終わったから豪雨が起きた」「ラニーニャになったから豪雨になった」と単純につなげることはできません。
実際に大量の雨を降らせたのは、停滞する前線と、そこへ流れ込み続けた大量の暖かく湿った空気でした。
1998年は、「大規模な気候変動」と「個々の気象災害」を分けて考える重要性がよく分かる事例といえます。
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