2000年(平成12年)10月6日、鳥取県西部を震源とする大きな地震が発生しました。
平成12年(2000年)鳥取県西部地震です。
地震の規模はマグニチュード7.3。
鳥取県境港市と日野町では、最大震度6強を観測しました。
住宅の全壊・半壊や液状化、道路・鉄道・港湾などへの被害も発生しています。
それでも、この地震による死者は0人でした。
1995年の阪神・淡路大震災と同じM7.3という大きさだったことを考えると、「なぜこれほど強い地震で死者が出なかったのか」と疑問に感じる人もいるでしょう。
実際、政府の地震防災情報システムは当初、建物倒壊約8000戸、死者約200人という被害を推計していました。
しかし、実際の被害はそれより大幅に小さなものとなりました。
そこには、地震波の性質、建物被害の特徴、発生した時間帯、防災対応など複数の要因が関係したと考えられています。
この記事では、2000年鳥取県西部地震について、地震の発生状況、なぜ死者0人だったのか、液状化によって何が起きたのか、そして被害想定の考え方まで解説します。
2000年鳥取県西部地震とは
地震が発生したのは、2000年10月6日午後1時30分です。
震源は鳥取県西部の深さ約9~11kmという浅い場所でした。
| 項目 | 内容 |
|---|---|
| 地震名 | 平成12年(2000年)鳥取県西部地震 |
| 発生日時 | 2000年10月6日13時30分 |
| マグニチュード | 7.3 |
| 震源の深さ | 約9~11km |
| 最大震度 | 震度6強 |
| 震度6強 | 鳥取県境港市・日野町 |
| 死者 | 0人 |
| 負傷者 | 182人 |
| 住家全壊 | 435棟(気象庁現在資料) |
内閣府資料では、全壊430棟、半壊3065棟、一部損壊1万7155棟とする集計もあります。
災害の被害数は、調査時期や集計基準によって多少変わることがあるため、本記事では数字の出典を分けて見ていきます。
地震はどのような仕組みで起きた?
鳥取県西部地震は、海溝で起こる巨大地震ではなく、陸地の地下で断層が動いたことによって発生しました。
震源が浅かったため、震源周辺では非常に強い揺れとなりました。
地下の断層が横方向にずれた
気象庁によると、この地震はほぼ東西方向に圧力がかかった横ずれ断層型の地震だったと推定されています。
横ずれ断層とは、断層を境にした地盤が水平方向へずれるタイプの断層です。
余震は北北西から南南東方向へ約30kmにわたって分布しました。
この余震分布からも、地下で断層破壊が広い範囲へ進んだことが分かります。
震源が浅かったため強い揺れになった
震源の深さは約9~11kmでした。
一般に、同じ規模の地震でも震源が浅いほど地表までの距離が短いため、震源付近では強い揺れになる場合があります。
鳥取県西部地震では、震源から離れた境港市でも震度6強を記録しました。
境港市東本町では最大合成加速度約763ガルが観測されています。
なぜM7.3・震度6強なのに死者0人だった?
鳥取県西部地震で特に注目されたのが、地震の規模や震度と比べて人的被害が少なかったことです。
ただし、「この一つの理由で死者0人になった」と断定できるものではありません。
複数の条件が重なった結果と考える必要があります。
建物を壊しやすい周期の揺れが相対的に小さかった可能性
政府は地震後、想定より建物被害が少なかった理由について検証しました。
その中で注目されたのが、地震波の周期です。
内閣府資料では、鳥取県西部地震は地震波の周期が比較的短く、阪神・淡路大震災とは揺れの性質が異なっていた可能性が指摘されています。
建物には、それぞれ揺れやすい周期があります。
地震の揺れが建物の揺れやすい周期と重なると、大きく振られて倒壊などにつながりやすくなります。
つまり、同じ「震度6強」でも、揺れの周期や継続時間によって建物への影響は同じではありません。
建物の全壊・倒壊が想定より少なかった
政府の地震防災情報システムでは当初、約8000戸の建物倒壊と約200人の死者が推計されました。
しかし実際の全壊は約400棟規模でした。
地震で多数の死者が発生する大きな要因の一つが、住宅や建物の倒壊です。
鳥取県西部地震では、震度6強を観測したにもかかわらず、建物倒壊が推計より大幅に少なかったことが人的被害の少なさにつながったと考えられます。
この結果はその後、政府の地震被害推計方法を見直すきっかけにもなりました。
▶ 同じ震度でも被害が違うのはなぜ?地震の周期と建物の揺れ方を解説(準備中)
「震度6強=同じ被害」ではないのはなぜ?
地震ニュースでは「震度」が大きく取り上げられます。
しかし、震度だけを見て実際の被害規模を完全に予測することはできません。
震度はその場所で感じる揺れの強さを示す
震度は、ある地点でどの程度強く揺れたかを示す指標です。
一方、地震そのものの規模を表すのがマグニチュードです。
同じ地震でも震源からの距離や地盤条件によって、場所ごとの震度は変わります。
さらに同じ震度でも、揺れの周期や継続時間が異なれば建物への影響も変わります。
建物の種類や地盤でも被害は変わる
実際の被害は、地震の揺れだけでなく、
- 建物の耐震性
- 建物の古さ
- 木造か鉄筋コンクリートか
- 地盤の硬さ
- 地形
- 家具の固定状況
などにも左右されます。
そのため、「以前の震度6強では大丈夫だったから、次も大丈夫」と考えることはできません。
同じ震度でも災害の姿は大きく異なる場合があります。
境港市や米子市では液状化が発生した
鳥取県西部地震のもう一つの大きな特徴が、液状化です。
特に境港市や米子市などの平野部で、液状化や地盤流動による被害が確認されました。
地面から砂や水が噴き出した
液状化とは、水分を多く含んだ砂地盤が強い地震動を受けることで、一時的に液体のような状態になる現象です。
地震前には砂粒同士が接触して建物などを支えています。
しかし強い揺れを受けると砂粒の間の水圧が上昇し、地盤が建物を支える力が低下することがあります。
鳥取県西部地震では、米子市の住宅地で砂や水が噴き出したり、住宅基礎下の地盤が沈下したりする被害が発生しました。
港湾や空港にも液状化被害
液状化被害は住宅だけではありません。
境港などでは臨港道路の路面変状が発生しました。
米子空港でも滑走路に亀裂が入り、補修のため一時利用できなくなりました。
港湾や空港は海沿いや埋立地などに造られることが多いため、地盤条件によっては液状化対策が重要になります。
▶ 液状化とは?地震で地面から水や砂が噴き出す仕組みを解説(準備中)
液状化すると住宅はどうなる?
液状化というと「地面に水が出てくるだけ」と思うかもしれません。
しかし住宅や道路、上下水道などへ大きな被害を与える場合があります。
家が沈んだり傾いたりする
液状化によって地盤が建物を支える力を失うと、建物が地面へ沈み込むことがあります。
建物全体が均等に沈めばまだよいのですが、場所によって沈み方が違うと住宅が傾きます。
建物そのものが倒壊していなくても、傾きが大きくなれば生活を続けることが難しくなる場合があります。
地下の水道管や道路も壊れる
液状化では地面そのものが動くため、地下に埋設された設備にも力が加わります。
水道管や下水管が破損したり、マンホールが浮き上がったり、道路に段差や亀裂が生じたりする場合があります。
鳥取県西部地震でも道路、港湾、水道などさまざまなインフラが被害を受けました。
液状化は「建物だけの問題」ではなく、都市や地域全体の機能に影響する災害です。
中山間地域では住宅や石垣の被害が目立った
鳥取県西部地震では、平野部の液状化とは別に、中山間地域でも住宅被害が発生しました。
同じ地震でも地域によって被害の種類が違っていたことが特徴です。
古い住宅では倒壊や屋根瓦の被害
内閣府の災害対応資料では、老朽住宅や高齢者率の高い中山間地域で、住宅の倒壊や屋根瓦の落下などが目立ったとしています。
古い木造住宅では、現在の耐震基準を満たしていない場合があります。
そのため強い地震を受けると、柱や壁、接合部分などが耐えられず大きく損傷する可能性があります。
地盤崩壊や石垣の被害も発生
山間地域では、住宅被害だけでなく斜面や石垣などの被害も発生しました。
強い揺れによって地盤が崩れたり、道路へ土砂が流れたりすると、集落が孤立する危険もあります。
地震防災では建物の耐震化だけでなく、自宅周辺の斜面や地盤の危険性についても確認しておくことが大切です。
被害予測では「死者約200人」と出ていた
鳥取県西部地震は、政府の地震被害予測のあり方を見直すきっかけにもなりました。
地震発生直後、政府のシステムでは実際よりはるかに大きな被害が予測されていたためです。
政府システムは建物倒壊約8000戸を推計
阪神・淡路大震災後、政府は震度情報などを利用して地震発生直後に被害規模を推計する地震防災情報システムを運用していました。
鳥取県西部地震では、このシステムが
- 建物倒壊:約8000戸
- 死者:約200人
という被害を推計しました。
しかし実際には全壊は約400棟規模、死者は0人でした。
非常に大きな差です。
地震ごとの揺れの違いを考慮する必要が分かった
当時の被害推計は、阪神・淡路大震災などの被害データを大きな参考にしていました。
しかし鳥取県西部地震では、同じM7.3でも地震波の周期などに違いがあり、建物被害の出方も異なりました。
そのため政府は地震後、震度と建物被害の関係などを改めて検証し、被害推計方法の改善を進めました。
これは、過去の一つの大地震の経験だけで、すべての地震被害を予測することはできないことを示した事例でもあります。
▶ 地震直後の「被害推計」はどうやって計算する?(準備中)
鳥取県西部地震で死者が出なかった理由をどう考える?
死者0人だった理由について、後から一つだけを取り出して説明することは適切ではありません。
研究や災害対応の検証では、複数の好条件が重なった可能性が指摘されています。
建物倒壊が震度の割に少なかった
人的被害を左右する大きな要因の一つが建物倒壊です。
鳥取県西部地震では、強い揺れにもかかわらず、阪神・淡路大震災のデータなどを基にした予測より全壊・倒壊建物が大幅に少なくなりました。
地震波の周期特性などが建物被害へ影響した可能性も指摘されています。
結果的に、住宅倒壊によって多数の人が下敷きになる状況が発生しなかったことが、人的被害の少なさにつながったと考えられます。
防災意識や消防・医療対応も要因の一つと指摘
鳥取県西部地震後に消防・救急活動を検証した報告では、阪神・淡路大震災の教訓、防災意識、地域の消防・医療能力など複数の条件が人的被害を抑えた可能性が指摘されています。
地震が発生したのは金曜日の午後1時30分で、多くの人が起きて活動している時間帯だったことも、深夜の就寝中に比べれば避難や対応がしやすかった可能性があります。
ただし、次の震度6強でも同じように死者が出ないと考えることはできません。
建物、地盤、時間帯、火災、人口密度など条件が変われば、被害も大きく変化します。
地震・液状化についてもっと知りたい人へ
鳥取県西部地震は、「震度だけでは被害を判断できない」「地震では建物だけでなく地盤も被害を受ける」ことがよく分かる事例です。
地震波の周期、耐震構造、液状化などを詳しく知りたい人は、一般向けの地震・防災書籍も参考になります。
鳥取県西部地震から考える自宅の地震対策
大地震そのものを防ぐことはできません。
しかし、建物や家具による被害を減らす備えはできます。
まず住宅の耐震性を確認する
古い住宅では、現在とは異なる耐震基準で建てられている場合があります。
特に1981年以前の旧耐震基準で建てられた建物などでは、自治体が耐震診断や耐震改修への助成制度を設けていることがあります。
住宅の耐震性に不安がある場合は、自治体の制度を確認してみるとよいでしょう。
家具の転倒も大きなけがにつながる
建物が倒壊しなくても、家具や家電が倒れることでけがをする可能性があります。
特に寝室では、
- 背の高い家具をベッドの近くに置かない
- 家具を壁へ固定する
- テレビなどを転倒防止器具で固定する
- 出口を家具でふさがない配置にする
といった対策が重要です。
液状化リスクはどうやって調べる?
鳥取県西部地震では液状化が大きな被害をもたらしました。
自宅周辺に液状化の危険があるかは、ある程度事前に確認できます。
自治体の液状化ハザードマップを確認
自治体によっては、液状化が発生しやすい地域を示した液状化ハザードマップを公開しています。
一般に、
- 埋立地
- 旧河道
- 海岸付近
- 地下水位が高い砂地盤
などでは液状化リスクが高くなる場合があります。
ただし、ハザードマップで危険度が低いから絶対に液状化しないという意味ではありません。
土地を購入する場合は地盤の履歴も確認
住宅を建てたり土地を購入したりする場合には、現在の地図だけでなく、その土地が過去にどのような場所だったかを見ることも参考になります。
昔は川や沼、海だった場所が埋め立てられているケースもあります。
土地の履歴や地盤調査結果などを合わせて確認することで、地盤リスクをより理解しやすくなります。
▶ 液状化ハザードマップはどう見る?地盤リスクの調べ方(準備中)
2000年鳥取県西部地震についてよくある質問
鳥取県西部地震はいつ起きた?
2000年10月6日午後1時30分に発生しました。
震源は鳥取県西部の深さ約9~11kmでした。
マグニチュードはいくつ?
マグニチュード7.3です。
阪神・淡路大震災を引き起こした1995年兵庫県南部地震と同じM7.3ですが、被害の規模や揺れの性質は大きく異なりました。
最大震度は?
震度6強です。
鳥取県境港市と日野町で観測されました。
死者は何人?
死者は0人です。
一方、負傷者は182人発生しています。
なぜ震度6強なのに死者0人だった?
一つの理由だけで説明することはできません。
建物被害が予測より少なかったこと、地震波の周期が阪神・淡路大震災とは異なっていた可能性、防災対応など複数の条件が影響したと考えられています。
液状化はどこで起きた?
特に境港市や米子市を中心に液状化や地盤流動が発生しました。
住宅地だけでなく港湾、道路、米子空港などにも影響が出ています。
地震後に制度は変わった?
政府の地震防災情報システムが実際より大きな被害を推計したため、震度と建物被害との関係や被害推計方法について検証・見直しが行われました。
まとめ|鳥取県西部地震は「震度だけでは被害は決まらない」ことを示した
2000年鳥取県西部地震についてまとめると、
- 2000年10月6日13時30分に発生した
- マグニチュードは7.3
- 震源の深さは約9~11km
- 境港市と日野町で最大震度6強を観測した
- 死者は0人、負傷者は182人だった
- 住宅の全壊は約400棟規模だった
- 境港市・米子市などで液状化被害が発生した
- 道路、鉄道、港湾、空港などにも被害が出た
- 政府の当初の被害推計より実際の被害は大幅に少なかった
- 地震波の周期など、震度以外の要素が建物被害へ影響することが改めて注目された
という地震でした。
「震度6強」と聞くと、どの地域でも同じような被害になると思うかもしれません。
しかし実際の地震被害は、震度だけでは決まりません。
地震波の周期、建物の耐震性、地盤、人口密度、発生時間帯など、さまざまな条件が重なって被害規模が決まります。
鳥取県西部地震では幸い死者は出ませんでしたが、液状化や住宅被害、インフラ被害は広い範囲で発生しました。
この地震は、「大きな震度=必ず大規模な人的被害」「以前同じ震度で大丈夫だった=次も大丈夫」と単純に考えることができないことを示しています。
だからこそ、地震に備える際には住宅の耐震化、家具の固定、地域の地盤リスク確認など、複数の対策を組み合わせることが重要です。
関連記事
▶ 2000年に起きた重大事故・災害まとめ|日比谷線事故・三宅島噴火・東海豪雨など
▶ 2000年(平成12年)に起きた主な事件・事故・出来事まとめ
▶ 2000年東海豪雨はなぜ大被害に?新川決壊・都市型水害とその後の対策を解説
▶ 同じ震度でも被害が違うのはなぜ?地震の周期と建物の揺れ方を解説(準備中)
▶ 液状化とは?地震で地面から水や砂が噴き出す仕組みを解説(準備中)
▶ 地震直後の「被害推計」はどうやって計算する?(準備中)
▶ 液状化ハザードマップはどう見る?地盤リスクの調べ方(準備中)

